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君がいないと
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目が見えない状態になったのは2回目。
でも今回は本当は取ろうと思えば取れるんだ。それは分かってる。分かってるけど、蓮矢の真意が見えない以上どうしようもない。
「あ、あのさ、蓮矢。ひとつ聞いてもいい?」
「いいよ、どうしたの」
「怒って、る?」
「怒る?稔に?不思議なことを聞くんだな。そんなこと思わないよ」
「そ、そっか」
それに、こうなってしまうと蓮矢は固くなな態度を崩さない。前もそうだったけど、この状態の蓮矢に疑問を投げ掛けても、ちぐはぐな会話になってしまう。
「俺はこれから仕事で少し外に行かないといけないんだ。夕方には帰るから…少し待っていてほしい」
ちゅ、と額に口付けられ、何て返したらいいか分からず戸惑っているうちに、蓮矢は部屋を出ていってしまった。
「…このままずっとこの部屋にいるのかな」
蓮矢のことは好きだ。昔も今も、折れそうな心を支えてくれた大切な人。だからこそ分かり合いたいのに、それができなくてもどかしい。
夕方に帰ってくるって言っていたけど、それまで何をしていたらいいんだろうか。目隠し…取ってもいいけど、もしかしたらどこかから見てるかもしれないから、迂闊なことはできない。
俺は別に、蓮矢と別れたいわけじゃないんだ。
ただ…何も見えない中、独りで待たされる状態にされたのはちょっと不安になった。
いくら見知った部屋だとしても、見えない状態で何かできるほど俺は器用じゃないから…寝てろってことなんだろうか。
ごろん、と寝返りを打つ。
俺は結局、悶々と考えてしばらく眠れなかった。
**
「ただいま」
「ん…?あ、蓮矢…おかえり」
そっと柔らかく撫でられ、ぼんやりとした頭でされるがままにされる。
「ごめん、遅くなった」
「大丈夫…仕事お疲れさま」
そっと手を伸ばすと、柔らかく包み込まれた。
ほっと安堵する。
「前さ…」
「ん?」
「俺がほんとに視力なくしてた時、蓮矢が帰ってこないこと、あっただろ?」
「…、……、ああ、あったね。その日は、仕事が長引いてしまったんだ」
「そうなんだ…、まぁ、その時、すっごい怖くてさ…もし蓮矢が俺に興味なくなったらこのまま死ぬのかなぁなんて思って」
「…」
少し前のことなのに、だいぶ時間が経った気がする。懐かしさを感じながら、思い付くままに言葉を紡ぐ。
「俺、蓮矢がいないと何もできないんだなって実感したりして、…はは…それは今も、か」
「……稔」
柔らかく、けれど強く抱きしめられ、息が詰まる。恐る恐る背に手を回すと、さらに腕の力が強まった。
「蓮矢?」
「…」
返事はない。
ただ一言、「…ごめん」という苦しそうな呟きだけが、耳に届いた。
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