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この気持ちは、罪ですか?
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俺は、蓮矢のことがやっぱり分かってないんだと痛感した。
目が覚めるといつの間にか朝になっていた。
起き上がって周りを見回したけど、誰もいない。誰もいないと「分かる」。
ベッドと、本棚と、一般的なデスクが置いてある…余計なものがない、簡素な部屋。
大きめの窓にはクリーム色のカーテンがついていて、そよそよと入ってくる風が心地よい。
「あの日」と同じ感想。
おそるおそる、立ち上がる。
少しふらつく。でも、自分の足で立てる。
見回すと、見慣れた自分の服がハンガーにかかっているのが見えた。シャツと、ジーパンと…下着は折り目正しく整頓されて置かれていた。
嫌な予感がして、扉の前に行く。深呼吸をひとつしてから、取っ手に手をかける。
「…開いてる」
扉はすんなりと開いた。
そして俺は、そのことにひどく…
腹を立てた。
**
ぱちり、と音がして電気がつく。そして俺を見た瞬間、体を硬直させた蓮矢が目に入った。
ああ、そうだろうとも。
きっと蓮矢はあの日と同じように俺が居なくなってるとでも思ったんだろうな。
でもあの時とは事情が違う。
「稔…?!何で、まだここに…」
「…。あのさ、蓮矢」
ベッドから立ち上がり、蓮矢の元へとゆっくり歩く。こんなに狼狽えている蓮矢を見るのは新鮮だ。
「俺たちって、付き合ってるんだよな。恋人同士、だよな」
「そ、そうだな」
「いくら無理矢理目隠しをされたっていっても、それがなくなったからって話もせずに逃げ帰ると本気で思ってたのか…?」
「…こんなところに繋がれるなんて、嫌に決まって、」
「…っなぁ、なんで俺が目隠しとらなかったか分かってなかったのか?蓮矢と別れたくないからだろ」
「稔、俺は」
「…っ、それとも、蓮矢が外したってことは、俺と、わ…、別れたいって遠回しに言ってるのか?」
「そんなこと思うわけない!」
「じゃあ何でだよ!なん…何で、話してくれないんだ。どうして…本当の気持ち、教えてくれないんだ…っ」
我慢していたけど、無理だった。
ぼろぼろと涙がこぼれる。
分からない。分からないから知りたい。
好きな人のことを理解したいと思うのはいけないことなんだろうか。それが例え独りよがりのものだろうと、最低なものであろうと、俺は蓮矢の本音を聞きたい。
「稔は…俺の気持ちを知ったら、きっと怖くなって、逃げたくなるはずだ。だから、怖がらせる前に、解放してあげたかった」
「俺の気持ちを聞かないで決めつけないでほしい!蓮矢のことが好きで…すごい好きで、だから不安もたくさんあって、…それなのに、なんで…、…っ…」
頭が混乱して言葉が上手くまとまらない。
喧嘩したいわけじゃないのに、今までの思いが溢れて止まらない。
蓮矢は困った顔をしながら俺を見つめている。
こんな顔させたくないのに。
「話がしたい。蓮矢の本当の気持ちが知りたい。話してくれるまで俺はずっとここにいるからな…!」
止めどなく溢れる涙で、きっと顔はぐちゃぐちゃだ。困らせるって分かっててこんな駄々をこねるなんて、失望されるかもしれない。
「稔…ごめん」
「謝ってほしいわけじゃな、」
言葉を言い終わる前に、優しく抱きしめられた。いつもと同じ、柔らかい抱擁。
「泣かないで。話すよ。もし、話して…俺から逃げたくなったら、正直に言ってほしい」
蓮矢の服に涙が吸い込まれていく。
あの時とは違うやり取り。
蓮矢は微かに震えていた。
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