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誤解
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「あら、ごめんなさいね。大丈夫っ?! それ、どうしたの?」
マスクを引っ張られ、頰のアザが露わになっていることに気が付いた静は手でそれを隠そうとした。
「まさか、虐待?」
「違います」
「いいのよ。大丈夫だから。一緒に警察に行きましょうね」
誤解だと説明しても、信じてくれそうもなかった。
「怖かったでしょう」
手首を握られ、強制的に連れて行かれそうになる。
相手が男であれば投げ飛ばせばいいが、小さな子供とその母親では手が出せない。
「あの、誤解です」
「本当の事は言うなって言われてるのね?」
全く会話にならない。でも怖いのはあなただなんて言えない。
「静くん?! あなたは誰ですか?」
屈強な男を想像していたのか、拓海さんを見ると一瞬だけ驚いたような顔をした。
「あなたがこの子に虐待を?」
「違います。誤解です」
この時には静のマスクは子供がむしゃむしゃと食べようとしてヨダレまみれになっていた。
返されたところでもう一度付けることは出来そうもなかった。
「やぁね。虐待ですって」
「怖いわねぇ」
野次馬が集まって来てその中から声が聞こえて来た。
こんな迷惑をかけて、買い物は任せれば良かったんだと今更ながらに静は後悔していた。
自分がどんなに声を上げても聞き入れて貰えない。
でも家族だと思っている人を誤解されるのは嫌だ。
静は女性の手を外そうとするが、正義感からか女性とは思えないほど強い力で握られていてなかなか外れない。
「本当に誤解なんです」
「大丈夫よ。何も心配しなくていいから」
この人自身、昔何かあったのかも知れない。
静はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
拓海を見ると、後ろ、と言っていることが分かる。
女性とは反対方向を見るとすぐそばまで鈴成が来ていた。
女性に握られていない手を伸ばしかけて、やめた。
今度は鈴成が誤解されるのが嫌だったのだ。
それでも鈴成は躊躇うことなく静を抱きしめると耳元で囁いた。
「話し合わせて」
静は頷くことしか出来なかった。
「その手、離してくれないかな」
まさか後ろから声をかけられるとは思っていなかったのだろう。
ビクッと体を震わせてから振り向いた。
「あなたは?!」
「俺はこの子の恋人だ」
?!!!!
たぶん、ここにいる誰よりも静が鈴成の言葉に驚いていた。
「ということはそのアザはあなたが付けたのね!」
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