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冷たい視線
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校内に入るには守衛さんの所を通らなくてはならない。
「おはようございます。あの、1年A組の本島静です」
静が生徒手帳を出してそう言うと守衛さんはニコッと笑う。
「おはよう。話は聞いているから。どうぞ」
「ありがとうございます」
守衛さんの所を通って校内に入る。
すこし早めなので、まだ寮から校内に来ている生徒は少ししかいない。
教室を覗くとまだ誰も来ていなかった。
静は前の扉から入ると、教卓を触る。
「……鈴先生………」
無意識に呟くとさっき閉めた扉が開いた。
別に悪いことは何もしていないけど、静は教卓に置いていた手を咄嗟に引っ込めてそちらを見た。
「君、誰? このクラスの子じゃ無いよね」
「え? いえ、僕は休んでいただけで」
「あ、ごめん。そっか、君が本島くんか」
静は誠が教育実習生が来たと言っていたことを思い出した。
「諸角先生?」
確かに誠の言うように可愛い人だったが、自分を見る目がなんだか嫌な感じがする。
「うん。そう、諸角春(モロズミ ハル)っていいます。よろしくね」
笑っている筈なのに目の奥が笑っていないような気がして背中がゾクッとする。
「よろしくお願いします」
形だけの挨拶になってしまう。
こんな時はまだ声とか感情とか前の方が良かったと思ってしまう。
2人きりでいるのは息がつまりそうだと思っていたら、ようやくクラスメイトが入ってきた。
「ハル先生おはようございます。あれ? 本島? もう大丈夫なの? みんなで心配してたんだよ。大変だったな」
「おはよう。心配してくれてありがとう」
「え? 声普通に出るようになったの?」
そういえば、事件の途中で声が出るようになって、そのまま休んでいたのだから、そのことを知らない人が殆どだった。
「うん、なんか急に出るようになったんだ」
「しーずーかーっ」
急に後ろから抱きつかれる。
「敦。おはよう」
「おはよう!」
敦は静の前に回り込み顔をじっと見る。
「うん、アザもクマも殆ど消えたな!」
その後も静を中心としてみんなが会話をしていた。
それを冷ややかな目で眺めている人がいることに静だけは気が付いていた。
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