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嫉妬
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保健室を出てすぐに静は胸の中に湧き上がったどす黒い感情が何なのか分からずに立ち止まった。
「あら、随分と近くにいたのね」
「諒平さん」
「ふふっ、あの先生に来て欲しかった?」
静は少し考えてから苦しそうに首を横に振った。
諒平はそんな静の頭をわしゃわしゃっと撫でる。
「あの先生が追ってくるの私が止めたの。静ちゃんが何で手を払ったのかも分かってなさそうだったから」
「え?」
鈴成が追って来てくれようとしてたなんて本当なのだろうか。 自分なんてもう面倒なだけの生徒なんじゃないのだろうか。静は胸の辺りに手を置く。
「そこはあの先生のことで一杯なんじゃない? 他のことが入る余地が無いくらい」
静は目を彷徨わせてから、コクンと頷いた。
「とりあえず、学校を出てから話しましょ。ここじゃ誰が聞いてるか分からないし」
諒平は静の歩く速さに合わせてゆっくりと歩く。
守衛さんの前を通って外に出るともうすぐ梅雨に入るとは思えない程の青空が広がっていた。
病院は駅の近くにあるので、歩いて15分程だった。
「静ちゃんが恋をするなんてねー。まだまだちっちゃいって思ってたのになぁ」
「恋なんて、してません」
消え入るような声で呟く静を諒平は微笑んで見る。
何が恋なのか分かっていないのだろう。
「でも胸の中はあの先生で一杯なんでしょ?」
「それは……そう、だけど………さっき手を……」
自分の手を見つめて静は溜め息をつく。
「嫌だって手を払ったこと? あの先生のこと嫌い?」
静はブンブンと首を横に振った。
嫌いな訳が無い。
「じゃあ、何が嫌だったの?」
何が? さっきの光景を思い出すと胸がズキズキとする。
「ま、いいわ。着いたから入って」
「え? ここ病院じゃないですよ?」
「遅かったな」
家から風間先生が出て来て微笑む。
「え?」
「ここは私達の家」
「検査は?」
「ここでも出来るから、とにかく入りなさい」
中に入ると可愛らしいものでいっぱいだった。
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