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胸の内
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「嫉妬に心当たりがある?」
「え? あの、さっき、鈴先生とハル先生が抱き合ってるの見て、嫌だって思った。でも何が嫌なのか分からなくて」
静の声は段々と小さくなり、俯いてしまった。
「もし抱き締めている相手が俺じゃなくて、泣きそうな河上くんだったら? 嫌だった?」
「え? 誠だったら嫌じゃないです」
静は顔を上げて不思議そうな顔をする。
「俺と河上くんは何が違うのかな?」
「……ハル先生は鈴先生に恋してるって思ってました」
「そんな人と抱き合ってたら、それに答えたって思ったんじゃない?」
その時のことを思い出しているのか、静は苦しそうにして頷いた。
「地迫先生と俺が付き合うかもしれない、それが嫌だった。違う?」
「そう、かもしれない、です」
「何で嫌なのかな?」
何で? 僕がそうしたいから。
そう思ったら恥ずかしくてどうしていいか分からなくなる。
顔から火が出るかと思うほど熱くなった。
「何で嫌か言ってみて」
「え? 無理」
静の答えにハルはニヤニヤする。
「どうして笑ってるんですか?」
「だって、何で嫌なのか分かったんでしょ?」
「それは………」
ハルは1つ大きな溜め息をついた。
「俺はここまでかな」
「ハル先生?」
「地迫先生も来てるんだよ。先に謝って来いって言われたんだ。まさか友達になれるとは思ってなかったけど」
ハルはニコッと静に笑いかけた。
「誰かに言わされた言葉なんて良くないと思う。自分から胸の中にあるもの全部言いなよ。地迫先生は優しいからちゃんと聞いてくれるさ」
鈴成が優しいことは静だって分かっていた。
誰にでも優しいのが問題なのである。
「ハル先生、教育実習が終わってもまた会ってくれますか?」
「それはもちろんだけど、まだ実習は結構続くよ? 中間試験の後も一週間はいるから」
試験を挟むという事は、確かにまだ時間はたくさんあるように感じるが、その分時間は短く感じるということだ。
「あの……」
「時間稼ぎはもうやめなよ。地迫先生呼んで来るね」
最後は時間稼ぎをしようとしたが、それまではそんなことなかった。
静は本当に実習が終わってからもハルと会いたいと思っていた。
玄関の扉が開く音が少し間をあけて2度聞こえる。
「本島くん」
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