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恋なんだ
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「じゃあ撮影に移りますか」
僕らはカンテラを片手に、本格的に撮影の段取りを始める。
撮影許可は昨夜、事前に取っておいた。
申請の許可証を、コーンに貼って、見えやすい場所に置いておく。
ここで僕と島くん、レンのBL組みと、
アキラ先輩と西村部長の夜桜組みに別れた。
夜なので、手持ち用や大型の撮影用のライトを出してきて、設置する。
これだけ見れば、テレビやモデルの撮影のようにも見える。
しばらくして、「twitter見ました!」という子が集まってきた。
それに釣られて、花見見物の客もわらわらと集まって来る。
「恥ずかしいね」
僕がそう言うと、
「俺もちょっと有名人になった気分です」
と、島くんが僕の耳元で呟いた。
「撮るね」
レンのカメラがフラッシュをたく。
夜は昼間と比べて写真の技術が格段に難しくなるらしく、ポーズも固定。
桜の木の前で、レンと手を繋いだり、ハグしたり、隣にならんで座ったり。
見物に来ている僕らのフォロワーさんはマナーがいい。
撮影中はケータイで写真を撮らずに、見守るだけ。
島くんは、潜在的にモデルの才能があるようで、指示を受けずともポーズを考えて僕を誘導してくれた。
「ハル先輩…」
島くんが何かを言おうとした。
僕は反射的に彼の方を振り向く。
_____ッ!
突然のキス。
僕は驚いて、彼を突き放そうとする。
が、しかし。
「ダメですよ、反抗しちゃ。今は撮影中なんだから」
そう言って、僕の腕を掴む。
「今日の先輩、色っぽいですね」
そう言って笑みを作る彼。
どうやらさっき急に動いたので、浴衣が少しハダけたらしい。
直そうと腕を腰に回すと、彼が俺の肩に手をかけて、押し倒して来た。
「わっ、島くん!」
一連の動作が凄く自然で、反抗する間も無かった。
瞬間。
きゃあと僕らを取り囲む黄色い歓声が上がった。
皆が見てる。
レンが見てる。
どうしてこんなに罪悪感を感じるんだろう。
レンをちらっと見る。
だけど、彼は何も言わなかった。
島くんは僕の手を上で固定して、首元にキスをした。
くすぐったい。
変な声が出そうになるのを必死でこらえる。
これは撮影だから。と何度も自分に言い聞かせた。
「ハル先輩」
名前を呼ばれて、我にかえる。
島くんを見上げると、真剣な目に思わずどきりとした。
彼の顔は思わず魅入ってしまいそうなほど整っている。
長いまつ毛、高い鼻、笑顔の似合う口元。
こんなに近くで見る機会、今まで無かったから。
「レン先輩のこと、いつも見てますよね」
島くんは手を止める。
「まあ、家族みたいなもんだし」
僕は思ってもいなかった質問に、なんて返せばいいか分からず当たり障りのないことを言った。
「恋ですか?」
「そんなわけない」と言いかけて僕は黙った。
レンを見る。
レンズ越しに此方を除く彼。
彼は今何を思っているのだろう。
ずっと抱えて来たモヤモヤは、これだったのかもしれない。
「そう…なのかも」
_______
____
「ハル、どしたん」
と、ポーズが乱れがちで不審に思ったレンが僕の名前を呼ぶ。
その声が心地良くて、むず痒い。
ああそうなのか。
これは恋なんだ。
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