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episode.2 朝
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〜奏多side〜
12月17日 8時
「ん…」
目が覚めて、辺りを見回す。
あぁ、そうだ。また、外泊したのか、と奏多が理解するのに数秒もいらなかった。
奏多は1人で寝るのは苦手だ。
でも、人の温もりも苦手。
だから、セックスして、そのまま寝るのが1番好きだった。
女の子を抱いた後は、何も考えないでよかった。
「…げ。」
何も言わずにシェアハウスを出てきてしまったせいか、不在着信の量がとんでもない。
その数なんと30件。
軽く恐怖である。
そのほとんどが知夏、そして少し涼から。
「カナちゃん、悪いけどもう帰るね。」
「んー…?もう帰るのー?講義ないんだし…奏多…もう少しいようよ…」
ぎゅう、と抱きついてくるカナを優しく引き離す。
「ごめん、もう帰らないと。」
「んー…またこんど、ね…」
まだ眠たいのか、ひらひらと手を振るカナに苦笑しつつ、奏多は帰り支度を済ませてカナの家を出る。
電話を折り返そうかどうしようか迷って、やめた。
絶対怒られる、という恐怖からだ。
奏多は頭の中で、知夏にどうやって許してもらうか考えていた。
とりあえず、甘い言葉で乗り切る。それから、後は謝る。
いや、そもそも逃げようか、とすら思った。
だがそれは絶対にまずいことになる。
とりあえず静かに帰ることに決め、シェアハウスに向かって歩く。
外の空気は冷たくて、まだ眠たい頭が覚めていく。
癖で、首元にかかったチェーンに触れた。
ひんやりと冷たい金属が、指に触れると安心した。
「…冬だなぁ。」
綺麗に晴れた空を見上げて、そんなことを呟く。
日曜の朝8時に、外を歩いている人はなかなかいなくて、少し静かだった。
空を眺めながら歩いていると、あっという間にシェアハウスに着く。
駐車場に車がきちんと停まっているし、駐輪場に月乃の自転車もあるので、奏多以外はみんないる。
そぉっと、そぉっと入ろう。
奏多はそう決めて、静かにドアを開けた。
誰もいないことを確認し、リビングに行くか、部屋に行くかを考える。ふと、先に涼に助けを求めようか、と思い至った。
「ちーちゃーん。奏多帰ってきたよ。」
後ろからそう言う声が聞こえ、奏多はため息をつきながら振り返る。
「月乃ぉ…それは言ったらだめだって…」
バタバタと音が聞こえてきて、2階から知夏が降りてきた。
「奏多。」
知夏は、怒っても声を荒げないが、それが逆に怖い。
「えーっと…ごめん、なさい。」
「どこに泊まったの?」
「カナちゃんの、家。」
「そう…連絡はできなかったの?誰かに言い残すとか。」
「…忘れてました」
「そう…」
「えっとえっと、ごめんなさい!それに別に浮気とかそういうんじゃなくて、俺は月乃と知夏姉さんが一番好きだし!」
「それを聞いてるんじゃないわよ?」
「ていうか私とちーちゃんが好きって言ってる時点で二股なんですけど。」
「いやもちろん月乃のこと大好きだよ?!知夏姉さんは頼り甲斐があってものすごく好きだし、俺には選べないって話で…」
「奏多。」
「…はい」
ペラペラしゃべってた口が勝手に止まる。
連絡なしに外泊するのは、みんなが心配することと、朝食の有無の関係があることから、知夏が怒るのだ。
「連絡をきちんとしないとみんな心配するって言ってるわよね?」
「はい…」
「あなたは1人暮らしじゃなくて、ルームシェアをしてるんだから、シェアメイトのことをもう少し考えなさい。」
「はい…」
こういう時、知夏は本当にお母さんに思える。
「ちー。それくらいにしてあげなよ。」
知夏のことを、ちー、と呼ぶのは、大学内でも、シェアハウスでも、1人だけだった。
「涼…」
涼は、ジャージで、髪の毛がボサボサのまま、2階から降りてきた。
いつもの涼を知ってる人からすれば、マジ誰お前、と言いたくなるほどの格好だ。
「知夏、ご飯にしよう。」
そう言って降りてくるのは涼とは対照的に、もうしっかりした格好の賢杜。
今日は髪の毛が軽くまとめてあって、スーツを着てるから会社に行くのだろう。
「…今回だけよ?」
「うん!」
「さ、ご飯食べましょう。」
なんだかんだで許してくれる知夏は、結局奏多に優しい。
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