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episode.12 SHOSE A
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〜奏多side〜
16時
「え、今からですか?ちょっと待ってください。」
資料整理も後半になった頃、バイト先から連絡が来た。
急遽欠勤が出てしまったらしく、出勤できないか、ということだった。
「本沢、バイト行ってもいい?」
一度スマホをおいて、本沢にそう聞く。
「どうした。」
「風邪引いて欠勤だって。」
「あとどのくらい残ってる?」
「あとこの5冊。」
「それならしまうだけだから行ってこい。」
「おっけー。」
本沢の許可を得て、もう一度スマホを取る。
「30分後には店につけます。はい、わかりました。」
17時から出勤になり、21時ラストまで働くことになった。
明日も元々休みだったし、今日変わるくらいなんてことはない。
(知夏姉さんに連絡だけしといて…っと。)
夕飯はいらない旨を伝え、帰り支度をする。
「お前どこでバイトしてんだっけ?」
「それ2ヶ月前にも聞いたよな?どうせ興味なくて覚えられねえんだから聞くなよ。」
「今は気になってるんだよ。おら、吐け。」
吐け、だなんて。尋問か。
「靴屋だよ。ショッピングモールの。」
「へぇ。」
「聞いといてその反応かよ…」
「知れたら満足。多分また忘れる。」
「最低だな。じゃーなー。」
「おー、明日勉強教えてやるから来いよー。」
「わかったわかった。」
大学の最寄駅から電車に乗り、ショッピングモールの最寄駅で降りる。
この駅のバス停から出ているバスで15分ほどで、シェアハウスの最寄のバス停に着ける。
大学とシェアハウスの間にあるので、バイト先としてはとてもいい場所だ。
「おはようございます。」
「悪いね、林くん。」
「いえ。」
店に着いたら、ロッカールームに荷物を置き、店員の目標になる名札をつける。
靴をここの店で売っているものに履き替えて、私服のまま接客だ。
もっとも、奏多は元々このブランドの服や靴が好きで、よく買っているので、大抵は履き替えなくて済む。
奏多がバイトしている、SHOSE Aという名前のこの店は、UHという大手企業が経営する店になる。
UHは主に衣服や靴などを手がけている有名な会社だ。
高級なものからリーズナブルなものまで、店によって全く異なるものを売っている。
SHOSE Aは比較的手の出しやすい値段だ。
時給は大学生以上で1000円。昇給制度があり、バイトでも有給休暇がもらえる。
従業員割引もあり、UHが経営する靴屋の靴ならば、バイトも社員も全員が持っている社員証を見せれば、2割引で買える制度もある。
シフトの融通も利くので、かなりホワイトでありがたい職場である。
ただ、ショッピングモールの中の店のため、土日はとても混む上、かなり忙しく、きついこともしばしば。
靴を運んだりするのは意外にも重労働なのだ。
それに様々な客を応対していれば、変な客に当たることもある。
けれどやりがいも楽しさもあるような仕事だ。
奏多は主に、月曜、水曜、土曜にシフトが入っている。
資料整理のバイトは、本沢のゼミがない木曜に入ることが多く、だいたいその翌日が勉強を教えてもらう日になるためだ。
土曜は11時から21時までで、2時間から3時間の休憩がある。たまに9時から入り、店のオープン作業をしていたりもする。
それ以外は大学の講義が終わってからなので不規則な時間だが、店が21時までのため、締め作業が長引いたりしても、22時半にはシェアハウスに帰れていた。
このバイトは高校生の時から続けているので、もうかなり慣れているし、できることも多い。
店長から頼られることもあって、奏多は結構気に入っていた。
そしてなにより。
忙しいこの店で働いている間は、何も考えなくて済んだ。
嫌なことも、思い出したくないことも、その時の悩みも。
だから今も、頭からずっと離れない、賢杜のことを忘れるためにちょうどよかった。
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