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episode.13 夜
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〜奏多side〜
「お疲れ様でしたー。」
「お疲れ様!」
22時。締め作業も全て終えて、店を出る。
代わりに出てくれたお礼に、と先輩がご飯を奢ってくれることになり、2人で近くのファミレスに行った。
ありがたくご飯を奢ってもらい、ファミレスを出た頃にはもう23時になっていた。
本沢の連絡先を開き、明日は13時からにしてもらうことにして、今のうちに目覚ましをセットする。
終バスはもう出てしまっているので、歩いて帰ることにした。
酔っ払いやチャラチャラした男たちがふらふらと道を歩いている。
(めんどくさそうなやつらばっか…)
関わらないほうがいいな、と考えながら、道の端をそっと歩く。
「ねーねー、おにーさん。」
話しかけられたが、無視を決め込む。
「おにーさんってば。」
「腕離せ。」
振り返ってそう言う。
腕を掴んできた男は1人だった。
奏多は顔が整っているから、たまに抱かせてくれ、とナンパしてくる男に出会う。
そう言う時は、抱く方ならいいよ、と言ってやればだいたいいなくなる。
けれどこうして腕を掴まれるのは、少し嫌なことを思い出す。
トラウマというほどのものでもないけれど、いい記憶ではない。
「つれないなぁ。イイコトしようよ。」
「そんな趣味ない。」
「いいじゃんいいじゃん!きもちーよ?」
ぐいっ、と引っ張られて体がよろめく。
ニヤニヤ笑う男が気持ち悪くて、背筋がぞくりとした。
「やめろって!」
「暴れないでよー。」
1人だと思っていたのは、どうやら奏多の勘違いだったらしい。
路地裏からぞろぞろと仲間らしき男たちが出てきた。
(5人もいる…)
奏多は別に武術を学んでいるわけでもないし、力は男性平均だ。
5人相手になんとかできるはずがない。
「やめろ!離せっ!!」
男たちに体を引っ張られて、路地裏に連れ込まれる。
「このままやっちまおうぜ。」
「野外かよー、趣味悪ー!」
「どうせ誰も来ねえよ。」
ゲラゲラ笑う男たち。
ドン!と壁に押し付けられて、ニタニタ笑う男たちが迫ってくる。
コートを脱がされ、その辺に放られた。
もうだめだ。
そう思い、ぎゅっ、と目をつぶったその時だった。
「あー、警察ですか?男5人でリンチみたいなことしてるんすけど…場所?えーと…」
「チッ、行くぞ。」
首謀者らしき男がそういい、5人がバタバタ走り去って行く。
残された奏多は、ズルズルとしゃがみこんだ。
「ったく…大丈夫かよ。」
拾ったコートを肩にかけられ、マフラーをぐるぐると巻かれる。
「トモ…なんでここに…」
「バイトのヘルプ。そこの店舗で。」
そういえば智夜は飲食店のチェーン店で働いていた。
いつもは家の近くで働いているはずだが、今日はこちらの方の店の人手が足りなかったようだ。
「ん、立てよ。」
手を差し出され、それを掴む。
自分の手が震えていることに、その時気がついた。
立ち上がるとそのまま手を引かれて、道を歩き出す。
「…お前さ、自分で思ってるより、お前は傷ついてると思う。」
「え…」
「…自覚がないだけで、結構トラウマなんじゃねえの。」
トラウマなんかには、なっていないと思っていた。
あれがあった後も別に怖くなかったし、日常を過ごせていた。
けれど心の奥底では、怖がっていた、とでもいうのだろうか。
智夜はそれ以上は言わず、近くに停めてあったらしいバイクのところまで行って、ヘルメットを放ってきた。
「うちくれば。シェアハウス送ってやってもいいけど、どっちがいい?」
「…トモの、家。」
後ろに乗れ、と顎で示され、従う。
シェアメイトには後で連絡しよう。
そう決めて、バイクの後ろに乗ったのをいいことに、智夜に抱きついた。
智夜は何も言わずにバイクを出し、家に向かった。
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