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episode.14 イチ
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〜奏多side〜
8ヶ月前 2030年4月
「ちょっと、離してよ!」
それは、入学式が終わってから2週間ほど経ったある日のことだった。
シェアハウスに入居したばかりの奏多は、いろいろとバタバタしていた。
その日は友人になったばかりの智夜と、陽生と3人で帰る約束をしていたが、奏多が講義室に忘れ物をして取りに戻ってきたところだった。
そこに聞こえてきた女の声。
聞き覚えがあるな、と廊下の先を覗いてみれば、シェアメイトになる鈴村月乃の姿があった。
確か同い年の看護学部生だったな、と思い出し、何かトラブルでもあったのか、ともう少し覗きこむ。
そして見えたのは、5、6人の男が月乃にベタベタと触っていた光景だった。
放っておいてもよかったけれど、シェアメイトだし、女の子だ。
何かあってからでは遅い。
「探したよー?どこ行ってたの?今日一緒に帰る約束してたのに……お友達…?」
軽いノリで話しかけて、輪の中に入って行く。
月乃はきょとんとした顔をしていたけれど、シェアメイトだと気がついてくれたようだ。
「は…奏多、くん。」
林、と言いかけて、親しい感じを出すために名前に言い換えていた。
こちらの意図は伝わったようだ。
「なんだよお前。」
「なにって…月乃ちゃんと一緒に住んでるの。そっちこそ何?」
「…ふーん…」
男の1人が、こちらを見てニヤリと笑う。
その視線は、どことなく気持ち悪かった。
「月乃ちゃん、先行ってて?後で行くね。」
「う、うん…」
月乃の手をぐいっと引っ張って、男の輪の中から出し、この場から逃した。
「てめえ…よくも邪魔してくれたな。」
「変なことしようとしてたあんたらが悪いんだろ。」
「嘘ついてまで助けたい相手だったの?」
先ほど笑っていた男が、そう言って近づいてきた。
さすがに、月乃が動揺しまくっていて、嘘だとバレてしまったらしい。
「だったら何?」
「好きなの?片思い?」
「別にそんなんじゃないけど…」
月乃に恋愛感情があるか、と聞かれれば答えは否だ。
可愛い子だとは思う。好みの顔だ。
好きか、と言われれば好きだ、と答える。
けれど、愛しているか、と聞かれたら愛していない、と答える。
そういう相手だ。
「ふーん…君、商学部の林奏多くん、だよね?さっき月乃ちゃんも奏多くんって言ってたし…1年生に顔の整った子がいるって噂は聞いてたけど…本当に可愛い顔してるね。」
「やめろよ気持ち悪い。」
手を伸ばされたので、その手をはたいてそう言った。
「…別に君でもいいんだよ?」
「……は?」
「俺は顔が好みの子なら誰でもいいんだ。女の子なら月乃ちゃんみたいに、愛嬌のある顔が好みだけど…男の子ならすごく可愛い子か、君みたいに男の子っぽくて、整った顔が好みなんだよねぇ。」
自分自身も好みの子なら誰でも抱くから、人のことは言えたものではないけれど、なかなかにひどいやつだと思った。
しかし奏多は望まれなければ手は決して出さないし、まして強姦のようなことは絶対にしない。
この男は、好みの子なら無理矢理にでも抱いてものにする、と言っているような気がした。
「まあ言われてみれば、イチの言う通り整った顔してるけどさ…」
イチ、と呼ばれた男は、笑みを深める。
「乗り気になった?お前らも乗り気なら、こいつでいいだろ?」
「イチが言うなら…」
「邪魔されて腹立つしな…少し痛い目見せてやろうぜ。」
イチと、5人の男たちが、奏多との距離を詰める。
殴りかかろうとしたが簡単に抑えられ、口を塞がれて無人の講義室に連れ込まれてしまった。
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