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episode.19 迎え
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〜奏多side〜
「カナ、迎え来たぞ。」
「ん……」
15時頃。どうやら知夏が迎えに来てくれたらしい。
智夜の声は聞こえるが、体がだるくて起こせない。
「おい、大丈夫か?」
「…うん……」
ふらふらと体を起こすが、歩ける気がしない。
思ったより熱が上がってしまったようだ。
「ったく…」
智夜が手を伸ばしてくる。
そのまま体を抱きかかえられそうになったときだ。
「ーー、ーーーーーーー…」
誰かが部屋に入って来た。
熱で頭がぼーっとしていて、何を言っているか聞きとれない。
しばらくベッドに座っていると、入って来た誰かが近づいてきて、体を抱き上げられた。
智夜とその人が何かを話し、コートを着せられて外に連れて行かれる。
「カナ、またな。」
「ん…」
こく、と頷いて、目を瞑る。
車の中の誰かと、奏多を抱えている誰かが話している声が、遠くに聞こえる。
車の後部座席に乗せられ、誰かの膝の上に寝かせられた。
その膝の上が、やけに心地よい。
「…おば……ちゃ…」
すり、とその人に擦り寄る。
優しく頭を撫でられた後、とん、とん、と背中を撫でられる。
瞼が重くなり、意識が遠のく。
「奏多、………」
名前を呼ぶその声は、懐かしいような、最近にも聞いたような、不思議な感覚をもたらした。
*
「……どこだ、ここ…」
「奏多!」
「…知夏姉さん…?」
「大丈夫?ここあなたの部屋よ。」
タオルと氷を持った知夏がそう言う。
「病院に行って帰ってきたの。覚えてる?」
ぼんやり、覚えているような、覚えていないような。
まだ体もだるいし、思い出せない。
「熱計って。」
「うん…」
体温計を渡され、それで熱を測る。
38.3と表示された。
「まだ高いわね…疲れでも出たのかしら。今週はバイト休みなさい。」
「うん…知夏姉さん、車借りたの…?」
「え?」
「迎え来たとき、車だったよね…」
「あら、覚えてないの?」
「え…?」
「あの車は賢杜のよ。」
「…内田、の?」
賢杜はまだ出張だったはず。
車だって、賢杜が乗って行っていたはずだ。
だからてっきり、レンタカーを借りたのだと思っていた。
「賢杜、今朝帰ってきて、あなたを迎えに行くって言ったら、車出すって言ってくれたのよ。涼のバイクじゃあなたを連れて帰れないし、頼んだわ。」
「内田…え、じゃあ、知夏姉さんと一緒に来たのって…」
「もちろん賢杜よ。運転してたのは私で、あなたをお友達の家から車まで運んでくれたのが賢杜。ぼーっとしてたからわかってないかもとは思ってたけど、やっぱりわかってなかったのね。」
微かな記憶を辿ると、痛い頭がさらに痛くなってくる。
(俺は、あの内田に縋ったのか…?は?ふざけてんの?まじで最悪なんだけど…)
「どうしたの?頭痛い…?」
頭を抱えた奏多に、知夏が心配そうにそう言う。
「いや…平気…」
「そう…?後でおかゆ持ってくるから、それまで寝ててね。」
「うん…」
知夏が部屋を出て行き、奏多は大きくため息をついた。
「…ほんっと、最悪…」
自分の失態を忘れたくて、奏多はまた目を閉じ、やってくる睡魔に身を任せた。
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