アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
episode.21 暇つぶし
-
〜賢杜side〜
内田賢杜の興味の中に、林奏多はいなかった。
1年ほど前にシェアメイトになった男、くらいの認識しかなかったし、ちらりと耳に入ってきた情報もどうでもよかった。
興味が湧いたのは、耳に入ってきた話の中に気になるものがあったからだ。
奏多は女たちからモテている。
けれど特定の相手を作ることはない。
そしてなにより、複数の相手をしていても誰も文句を言わない。
不思議だと思った。
自分だけを見てほしい、と言う女をごまんと見てきたからだ。
試しに女に聞いてみれば、奏多は恋人ではなく、アイドルみたいなものだという。
ただし、自分の要求をある程度のんでくれるアイドル、だ。
恋慕を寄せるのではなく、奏多から貰えるものを、要求する。
セックスを求めれば、抱いてくれるし、デートを求めれば1日遊んでくれる。
彼の恋人になりたい、と言うものはいなかった。
奏多はみんなのもの。
そんな認識があった。
賢杜は、どうにもそれが引っかかって、気になって仕方なかった。
特定の相手を作ろうと思えば作れる男だ。
たくさんの女とセックスをしたいのかと思ったが、どうやらそういう訳でもなさそうで、ますます理解できない。
そのうちに、奏多を目で追い、気にするようになった。
そして賢杜は、気がついた。
奏多自身が、恋心を寄せられることを拒否していた。
求められれば、奏多はいとも簡単に、誰にでも求められたものを与えた。
けれど、その与えたものの中に、愛はなかった。
もちろん、友情や優しさなど、一種の愛と呼べるものがなかったわけではない。
しかし、愛されることと、愛することは、なかった。
愛されることを、どこか怖がっているようにさえ見えた。
その理由までは、賢杜には分からなかったが、推測はできた。
自分が愛を求められても返せないから、愛されることが怖い。
賢杜はそう結論づけた。
ここで興味はなくなった。
そう思っていたが、賢杜は、奏多が南方智夜に見せた表情を見てしまった。
他の誰にも向けていない、柔らかい顔だった。
明らかに、他に向けている感情とは違っていた。
だが、智夜が奏多に何かを求めているようには見えなかった。
智夜は、奏多を友人としてしか見ていない。
絶対に、愛することは無いだろう。
そういうことか、と思った。
愛されることが怖い。
だから、自分のことを愛することのない人の隣は、居心地がいい。
そう考えて、それなら俺の隣でもいいじゃないか、と思った自分がいた。
これは、賢杜の遊びだった。
自分の隣で、他の誰にも見せない顔を奏多がしていたら、それはものすごい優越感を感じられると思った。
暇つぶしだ。
あの変わった男を俺のものにしてやろう。
そう決めた賢杜は、機会を伺っていた。
そして、見つけた。
「お前が一人の女に本気で惚れ込むことはないだろうという意味だ。」
図星を、ついただろう。そう思うと口元が緩んだ。
「……え…」
弱々しい返事だった。
堕とせる。
賢杜はそう確信し、真剣な顔を作った。
「怖いのか。……惚れられるのは。」
奏多は黙りこくった。
「怖いのは、応えられないからか? なら安心しろ。俺はお前に、そんなものまで要求するつもりはないからな。」
動揺している事はすぐにわかった。
けれど、拒絶の意思はなかった。
あと、もう一押し。
「……抱かせろよ。」
奏多の目が、ふらりと揺れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
24 / 505