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episode.26 違和感
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〜奏多side〜
1月5日
「風邪引いてたんだって?!大丈夫?」
「おー…もう治ったよ。」
年末に引いた風邪はかなり長引いてしまった。
智夜の家から帰ってきた日の深夜頃から熱が上がり、悪化してしまったのだ。
その日の記憶はすっかり抜け落ちていて、あまり思い出せない。
「…本当に平気か?」
「え?お、おう。トモには迷惑かけたな…」
「別に…」
智夜からのLINEに気がついたのも2日も経ったあとで、かなり心配をかけてしまっていた。
「…内田さんって、どんな人?」
「…は?」
「え、なになに、智夜、内田さんに興味あんの?!惚れた?!」
「陽生バカ言うな。この前迎えに来てたから。」
「…え、っと…?」
「お前覚えてねえのか?」
「…うーん…なんか、その日の記憶があんまなくてよ…なんか、ぼんやりとは、記憶にあるんだけど…」
「…ふーん。」
「で、内田?俺様でいけ好かない野郎だな。」
「だんだん評価が酷くなるよね。」
「仕方ねえだろ…前は興味なかったし…最近はなんか、やたらムカつくっつーか…」
「…あの人、お前に執着してるけど、なんか心当たりないのか?」
先日までは全く興味がなさそうだった智夜が、やけに詳しく聞いてくる。
「…どうしたトモ…内田となんかあったの?」
「…別に。」
「奏多がまた酷い目に合わないか心配してるんだよー。力では内田さんに敵わないみたいだから」
「…まあ、そう、だな。前みたいなことにはならねえと思うけど……そういやなんか…」
「気になることあるの?」
陽生が心配そうな顔をしてそう言う。
「風邪治ってから、なんとなく内田のこと嫌なんだよな…」
「前から嫌がってたじゃない。」
「いや、なんつーの?怖いというか、近づきたくないというか…うーん、嫌いとは違くて、嫌なんだよ。」
「…深層心理。」
「え?」
「無意識に、内田さんから遠ざかろうとしてる。カナが記憶が無いっていうその1日の間に、何かあったんじゃねえの。」
「でも、昼過ぎまでトモの家にいたんだろ?俺。その後何があるっていうんだよ?あの日はみんないたんだし…」
知夏も月乃も、涼も家にいたのだ。
それに何より奏多はまだ熱があって、寝込んでいた。
「…うん、さすがになんもねーと思う。」
「じゃあ、もっと前の出来事とか?」
「…前って?俺あいつと会ったのはシェアハウスが初めてだし…」
今まで、色々な都合から様々なところで生活したし、一時期は海外にいたことすらあるが、賢杜と会った記憶はない。
「じゃあ、急に執着され始めたから警戒してるのかな?奏多は、自分に何かされることを嫌うし…」
「うーん、そうかもなぁ…」
「…本当に、内田さんと前に会ったことないのか?」
「ないけど?どうしたんだよトモ。今日お前変だぞ?」
いつもならこんなふうに聞いてきたりしないのに。
表情も若干だが、心配そうである。
「心配してくれてありがと。でもまあ、平気だろ。そのうち飽きるって。珍しいだけだろ、自分を見てくれないやつが。」
「あー…確かに内田さんってモテるし、相手には困ってない。逆を返せば、抵抗してくれる子はいない、ってことか。」
「そうそう。それで俺に興味持ってるだけだって。」
「…まあ、カナがいいならいいけど。」
「なんとかなるなる。あいつの事で悩むの馬鹿らしい気がしてきたから。」
今の奏多は、切り替えが早いタイプだ。
昔からそうだったかと言われれば違うが。
「それより俺スケートしてえんだけど!」
「あーじゃあ今度行く?智夜も!」
「…まあ、いいけど。」
「本当はスキーとかスノボもいいなって思ったんだけどさー。」
そう、賢杜のことで悩んでいるより、こうやって今を楽しんだ方がいい。
放っておけば、賢杜もそのうち興味をなくすだろうし、次襲われそうになった時はもっと抵抗してやる。
奏多はそう考えていた。
微妙な違和感は、すべて見ないふりをして。
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