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episode.45 制裁
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〜陽生side〜
「……イチ。」
「君は…林くんのお友達。」
白々しい態度をとるイチに、今にもキレそうになるのを堪える。
「こんなところで何してるの?」
「資料探しに来たに決まってるでしょ。イチこそ何してるの?古い資料室から出てきて。」
「資料を探してたんだよ。新しい方にはなかったから、こっちにあるかと思って。」
「ほぉ…この前、あいつもそんなことを言っていたが?」
タイミングぴったり。
会話の中身が、景山が予想していた通りだったからだろう。
賢杜の声に、イチは一瞬、顔をしかめた。
「…あれ、あの夜の方でしたか。あいつって、誰です?」
「とぼけるのはよせ。あいつのスマホに写真があったぞ。お前が映っていた。」
「バカな…!俺が写らないように……っ…」
イチの顔が青ざめた。
これは、カマをかけただけで、賢杜が本当に写真を見たわけではない。
だが、奏多のスマホには本当に写真があり、しかもそれで奏多を脅していたようだ。
そこに、見事に引っかかった。
「へぇ、脅迫、ってやつかな?」
ニコニコしながらイチの背後に迫る悠汰。
やけに色っぽいその口元とは裏腹に、目は冷たい。
「そんなことしてませんよ。」
ケロッとした顔でそんなことを言うイチに、陽生が我慢出来なくなった時。
「刑法第222条。生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」
凛とした声がした。
「…あなた、誰?」
「購買のおじさんさ。道に迷っちゃってね…たまたま聞こえてきた会話が、気になってしまってね。」
「あなたには関係ないでしょう。」
「しらばっくれるなよ!お前また奏多のこと脅して、それで…!」
陽生はその先を言いかねて口を噤んだ。
「昔は疎かにされていた同性同士の性交も、今は異性同士と同じ扱い。暴行、脅迫が伴えば、強制性交等罪に値する。…バカのお前にも理解出来たか?」
陽生が驚いてしまうくらいに、賢杜の言い方は冷たかった。
いや、もともと冷たい男ではあるが、それとは比にならない。
怒っている、と感じた。
「そんなの証拠がないだろ…!」
「今もあいつのスマホには写真が残ってるんだろう?それにこの部屋の中にはあいつもいるだろうな。今から病院とと警察に連絡し、体液検査をすれば1発でわかることだ。」
さすがのイチもお手上げなのか、黙って俯いた。
「俺たちは、君を警察につき出そうとは思っていない。そんなことをしたら、奏多くんまで余計に傷つくことになる。」
景山が静かにそう言う。
「ただ…」
一瞬、だった。
背中がヒヤリとするような、殺気を感じた。
殺気というと、言い過ぎかもしれないが、明らかに日常的に感じられる気配の中にはないようなものだった。
陽生が景山の方を振り返ったときには、もうその気配はなくなっていた。
「もう奏多くんに二度と近寄らないでほしい。それから、ここにいるみんなにも。もしこれを破るようなことがあれば……」
その先は、あえて言わなかったのだろう。
景山が纏う空気は冷えきったままだ。
「わかったならさっさと行け、クズ。」
吐き捨てるようにそう言った賢杜に、悠汰は苦笑いする。
イチがいなくなるより前に、智夜が扉を開けて、中に入った。
「…なんか、ありがとうございます。」
「あ?」
「その、あいつに…色々言ってくれて。」
中に入る前、賢杜にそう言った。
「…別に。俺もムカついただけだ。」
賢杜はそれだけ答えて、早く入れ、とばかりに中を示す。
賢杜とはそれ以上の会話はなく、あとは奏多へのアフターケアに集中することとなった。
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