アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
episode.46 笑顔
-
〜奏多side〜
(どこ、ここ…)
見覚えはあるが、すぐにはわからない。
場所が変わっていることに、恐怖を感じた。
(イチは…?講義はどうしたっけ…?)
「おい、起きたみたいだぞ。」
「ぅわっ?!」
頭上から声がして、慌てて体を起こす。
「…そんなに飛び起きなくても。」
「んだよ本沢かよ…脅かすなっつの…」
視界に入った本沢を見て、安心してまた横になろうとした。
が、おかしい。
「…なんで、本沢が、いんの?…は?え?」
体のだるさや痛みを感じるから、夢ではない。
本沢の教授室にいる。
でも、なぜ。
「俺に聞くな。あいつらが連れてきたんだからな。」
「奏多…」
「…トモ?陽生?…景山さんまでなにしてんの…」
全く状況が飲み込めない。
そして見回した室内に見つけたのは。
「…っ、はぁ?!なんでてめえがいんだこの野郎!!」
「…キャンキャンうるせえな。これだけ元気なら平気だな。悠汰行くぞ。」
「えっ!ちょっと待ってよ賢杜。」
焼肉の時にもいた友人、悠汰というらしいが、その男に止められ、賢杜は仕方なくといった感じで中にとどまった。
「…あの、誰か俺にわかるように、説明は?」
「…とりあえず、今の時間は18時。講義はもう全部終わってる。」
「えっ。」
陽生の言葉に驚いて外を見ると、確かに真っ暗だ。
「お前がここに来たのは昼休み。俺と、こいつらは講義で抜けたりした。その髪長いおっさんがずっとお前のそばにいた。とりあえず以上。」
「本沢の説明じゃ半分もわかんねえよ…」
「…カナ、悪かった。」
「はぁ?なんでトモが謝んの?」
「みんな、見たから。」
智夜の申し訳なさそうな顔と、その言葉で、奏多はわかった。
なにを、見たのか。
なぜ自分がここにいるのか。
「…はー…ちょっと遊びすぎただけだって。倒れてたんだろ?気にすんなよ、そんな顔することじゃない。」
きっとあのまま気を失ってしまったのだ。
そう思って、そう答えた。
けれど智夜は、目を伏せて、陽生がこちらをじっと見ている。
「…なに、なんなの。ねえ、景山さん。なんなの。」
この中で、包み隠さず教えてくれそうな人を指名した。
「…全部、知ってるよ。」
景山はそれしか言わなかった。
いや、それで十分だった。
「…ははっ、なに、みんなして俺を慰めようっての?もういいから帰れよ。」
「奏多、そんなんじゃ…」
「いいって。怒ってるんじゃないし、ただ、1人になりたいだけ。お前らと一緒には、帰りたくない。」
半分は嘘。
本当は1人になりたくない。
でも、もしかしたらイチは、奏多が1人になるのをまた待ってるかもしれない。
ここでみんなと一緒に帰っても、いたちごっこだ。
「あのクソ野郎ならもうお前のところには来ねえぞ。」
奏多の考えを見透かしたかのような言葉に、驚いて顔を上げた。
「イチだったか?あいつは、景山っていうそこのおっさんが潰した。」
「つぶし…、つぶした?!」
「いやいやいや!そんなに物騒なことしてないよ。少し法律を教えてあげただけで…」
慌てて否定する景山だが、陽生と智夜の反応を見れば、賢杜の言っていることはあながち間違いでもないことがわかった。
「まあつまりね、部外者の俺が遠慮なく言うと、君はもう気を使う必要は無いよ、ってことかな。あのおバカさんは来ないし、俺たちはみんな知ってる。だから君の好きなようにしてくれ、ってことで…合ってるよね?」
悠汰が、他のみんなの顔を見回してそう言う。
各々の反応から、同意が読み取れた。
「本沢も、知ってんの。」
「…まあ、大体はな。つーかなんでこの前1人で帰ったんだよバカ。何のためにここで待たせてたと…さっさと行っちまいやがって…」
「…ごめん。」
イチの言葉から、あの時本沢は、奏多のためにあんなことを言っていたのだとわかっている。
「…んな顔すんなよ。あーもう、そこのおっさん。カフェ店員とか言ってたな?こいつら全員連れてって飯作ってくれ。」
「えっ、あ、はい。」
「これで好きなもん作ってやって。」
サッ、と出された数枚の万札。
「ぷはっ、俺たちにどれだけ食わせる気なの、教授。」
「高すぎますね。」
思い切り笑う悠汰と、苦笑する景山。
バツの悪そうな本沢。
「ふふ、あははっ、バカじゃねーの。」
思わず笑ってしまった奏多を見て、全員が安心したことを、奏多は知ることはない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
51 / 505