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episode.47 オムライス
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〜奏多side〜
「じゃあ、座って待ってて。」
19時をまわり、既に閉店した景山の店、喫茶REI 78に来た奏多たちは、カウンター席についた。
「店番任せて悪かったね、木下くん。」
「いや、大丈夫っす。今日は暇でしたから。」
「悪いけど、これでもうひと仕事頼むよ。」
「うっす。」
結局あのまま貰った本沢からの万札は、木下の残業代になるようだ。
もちろん本沢も誘ったが、仕事だと断られてしまったので、ありがたく奢られることにした。
「さて、みんな何食べる?」
喫茶REIは北林大学生の行きつけだ。
木下は一応メニューを出してくれたが、見なくても注文できてしまう。
「あ、暇でランチメニュー余ってるから…それでもいいよ。」
「え!じゃあ俺ランチプレートがいい!」
「AとBは残ってるけど、どっち?」
「Bでお願いします!」
即決した陽生は、いつもこのメニューな気がする。
「俺はナポリタンで。」
「陽生くんはランチBで、南方くんがナポリタンね。他の3人は?」
「俺もランチプレートもらおうかなー。」
「橋下くんはランチAね。」
「なんでAってわかったんですか?」
陽生が不思議そうに景山に尋ねる。
「橋下くんはね、ネギが嫌いなんだよ。」
クスクス笑う景山。悠汰はちょっと恥ずかしそうだ。
そういえば、ランチBはネギたっぷりの和風ハンバーグだ。
「もー、黙っててよー。」
「お前は好き嫌い多いからな。」
「野菜全般が嫌いなお前には言われたくありませんー。」
「別に嫌いではない。好んで食べないだけだ。俺はハヤシライスを。」
そういえば、賢杜は野菜はさっさと食べてしまうところがあるなぁ、なんて奏多は思った。
(あれは嫌いだったからか…)
思い出したらおかしくなってきた。
今度夜ご飯を作る時は野菜炒めにでもしてやろうと思った。
「お前今余計な事考えたな。」
「え?そんなことないって。」
そう言いながらもニヤニヤしてしまっている気がする。
「チッ…悠汰…てめえ覚えとけよ。」
「なんで俺?!」
「奏多くんは何食べる?」
「…オムライス…かな。」
「珍しいね。」
奏多はここでオムライスを頼んだことはない。
けれど、嫌なことがあった後は、オムライスなのだ。
「木下くんのオムライスは絶品だよー。」
「…店長のほうが…」
「どっちに作って欲しい?」
「えっ、どっちでも…」
「じゃあ店長で。」
「あっ、木下くん逃げた。」
この店のこういう雰囲気が、奏多は好きだった。
温かくて、和やかな、この雰囲気が。
「お待たせ。」
15分ほど待って、全員の料理が揃った。
「「いただきます。」」
景山と木下はコーヒーを飲み始め、奏多たちは食事を始めた。
オムライスを口に運んで、思わず固まった。
「ね、景山さん…」
「ん?」
「これ、このレシピって、景山さんが考えたの…?」
「オムライスかい?そうだよ。」
「…そっか。」
「どうかした?」
「…ううん、なんでもない。」
オムライスなんて、よくある料理だ。
味が似ていたっておかしくはない。
奏多は自分にそう言い聞かせて、溢れそうなものに蓋をして、ひたすらオムライスを口に運んだ。
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