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episode.71 お気に入り
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〜本沢side〜
2月12日
「おいおい吐くなよー!」
「大丈夫だって!」
「ぎゃははは!」
酔っ払いばかりがいる居酒屋の通り。
本沢はそこにいた。
「んふふ…おうちかえろ?」
酔っ払った男一三波和希と共に。
「わかりましたから、少し離れて。」
「なんで?」
きょとん、として首を傾げる三波。
どこからどう見ても酔っ払っている。
今までの飲み会で潰れたところなど見たことがなかったのだが、どうやら三波は酒など飲んでいなかったようなのだ。
今日は、一緒に飲みにきた教授に勧められて、飲んでいた。
その教授については、同じ大学の教授でありながら、詳しいことは知らない。
だが、三波が断れないところを見ると、それなりに偉いのだろう、ということだけわかった。
三波の担当はマーケティング論。
他の学部にもある学問だ。他学部には別に教授がいるものの、交流はあるだろう。
統計学とてそれは同じことだ。
今日は商学部と経営学部合同の飲み会だったから、マーケティング論の教授がいてもおかしくはない。
そこまでは本沢にだって簡単に理解出来た。
だが、問題は酒を摂取したあとの三波だった。
本沢は、自分で言うのもなんだが酒は強い。
もっと若い頃に1度飲みすぎて、友人の前で吐くやら絡むやら、やらかしたこともあるから、限界値も知っている。
そしてその限界値は、大体の飲み会で超えることは無い。
今も酒を飲む前と大して変わっていなかった。
だが、三波はウーロンハイを5杯飲み干し、これである。
酒に弱い訳では無い。限界値を知らないだけだろう。
そんな三波は、本沢に寄りかかり、フラフラとしている。
時折本沢の腕に顔を埋めては、くんくんと匂いを嗅ぎ、何が楽しいのか、本沢の指で遊び、ふふ、と笑っている。
頼むから、あまり接触しないでほしい。
本沢は、まだ勃つ。
「ね、おうちかえる。」
「だから、お家どこですか?」
「んふふ、ここー。」
ぎゅ、と腕に抱きついてくる三波に、本沢は無の境地に入った。
頭の中に、つい先日見かけてしまった、賢杜と奏多のキスシーンを思い浮かべれば萎えた。
「落ち着け俺。」
ブツブツとそう繰り返し、とりあえず大通りを目指して歩く。
三波がなかなか進まないので、ここまで時間がかかっているのだけれど。
「くるま、のる?」
ふにゃふにゃぁ、と笑う三波に、本沢はまた萎えることを考え始める。
「そうですね、タクシー乗りましょうか。」
「おうちね、あっち。」
「タクシーの運転手に言いましょう。」
なんとか大通りまで出て、タクシーを捕まえる。
やっと目的地を伝え、とあるマンションの前に降りた。
「…ここ、ね。」
自分のマンションとは少し離れている。
「何階です?」
「よんかい。かぎこれ。」
へらっ、と笑いながらカバンから鍵を出してきた三波からそれを受け取り、エレベーターに乗り込む。
なんとか部屋の前まで着き、鍵を開けて中に入った。
家の中はグレーや黒のシンプルな家具で統一されていて、三波らしい、と思った。
「おふろー…」
「はいはい…俺は帰りますんで、鍵だけ閉められます?」
「…もとざわくん、かえる?」
ずるいだろう、おい。
本当にこの人はアラフォーだろうか。
「…帰りますよ。明日も大学行きますし。」
「えぇ…」
不満そうな声を出し、フラフラと冷蔵庫に寄っていく三波。
それから、冷蔵庫の中から取り出したのは、缶チューハイだ。
「いっしょにのも?これ、おきにいりなんだ。」
どうやらこの男、お気に入りのチューハイがあるくらい、お酒は好きらしい。
そして本沢のことも、お気に入りらしい。
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