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episode.72 ベッドの上で
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〜三波side〜
いつも通り、朝6時に目が覚めた。
昨晩は何時に寝たか全く覚えていない。
というより、飲み会から記憶が無いが、家にいて、何事もなくいつも通り寝ているのだから、とりあえず問題は無い。
確か今日は午後から大学に行くんだったな、などと考えながら右を向いた三波はそのまま固まった。
「え…?」
綺麗な睫毛。整った顔。
よだれはおろか、呼吸さえしているのか怪しいほど美しい寝顔。
そーっと布団をまくると、なぜか上裸。
自分は寝る時はバスローブのため、それを着ているとはいえ、なんというか。
(事後…?というか、なんで…)
「ここに本沢くんが…」
同じ大学の同じ学部の教授だから、ある程度仲はいいとは思っている。
本沢から話しかけてくれることも多いし、三波としても気に入っているところがある。
それは確かだが、家に呼ぶほどの仲では無いのも確かだ。
冷静に考えて、ふと思い立った結論は、あまりに本沢に申し訳なかった。
とにかく起きなければ、と思い体を起こそうとする。
その時、ベッドがギシリと軋み、本沢が目を覚ました。
「…んだよ…まだ朝早いだろ…寝てろ。」
誰と勘違いしているのか、ベッドに引き込まれる。
「ええと…本沢くん。その、俺が悪かったとは思うんだが、離してもらってもいいかな?」
「あぁ…?」
朝は苦手なのだろうか。
いつもと違って口も悪いし、態度も悪い。
そして何より、眉間のシワがすごい。
それを見て、思わず笑ってしまいそうになった。
「…あ?」
きちんと覚醒したらしい本沢が、サァァと青ざめる。
「…うわ、俺なんか言ってました?」
「ううん。なにも。」
ふふふ、と笑うと、絶対嘘じゃん、と呟く本沢。
そして頭を抱えた。
が、本当に頭を抱えたいのは三波の方だ。
「あ、その…俺、昨日のことはあまり覚えてなくて…もしかしてとんでもなく迷惑をかけてしまったんじゃないかと、思うんだが…」
「………………や、そんなことないです。」
その間は、そんなことなくないだろう。
どう考えても、酔っ払った自分の世話をさせたに違いない。
「どうお詫びしたらいいだろう…こんな、おっさんの部屋に来させて、一晩過ごさせてしまった…それも…」
同じベッドで。
申し訳なさすぎて、ため息をつきそうになる。
「いや別に…俺も30過ぎてるからおっさんですし、一晩過ごしたのはむしろこっちがすいませんって感じだし…」
律儀に三波の気にしていることを否定してくれる本沢。
基本的に優しい男だと思う。
もっとも、その優しさは本沢の興味のある相手限定な上、一晩過ごした女くらいなら、このあたりで追い出されているか本沢が帰っているのだが。
三波は当然、そんなことを知るわけはない。
「でもやっぱり、同じベッドで寝るなんて…」
嫌だっただろう。
これがもし、可愛らしい女性だったり、魅力的な男性だったり、とにかく本沢のお眼鏡にかなうような相手ならよかったのだろうが、こんなおじさんでは喜びもないだろう。
自分を卑下しているわけではないが、いわゆるラッキースケベ的な展開とは、とても言えない。
「…まあそれは、ちょっと…」
やっぱり嫌だったのか。
本沢には珍しくもごもごと口ごもり、目線を彷徨わせる。
「その、お詫びといってはなんだけど、なにか食事でも奢ろうか…?いやでもそれも…おじさんと出かけるのは楽しくもないよな…」
「いや、食事行きましょうよ。」
サラッ、とそう言う本沢。
変な気を使わせてしまっていないか心配だが、あまりにあっさりしているので、食事に行くことにした。
「いつがいいかな?本沢くんに合わせるよ。」
「いやいや、あなたも忙しいでしょう…まあ、急ぎませんから。ゆっくり考えましょうよ。」
「あぁ、うん。」
とりあえず、昨晩のことはこれで片付いた。
「…ところで、本沢くん。」
「はい?」
「そろそろ、服を…着てくれないだろうか。」
恥ずかしい、とかではないけれど、なんとなく目のやり場に困る。
鍛えているのだろうか、均整のとれた体だ。
自分のひょろっとした体とは違うので興味はある。
だが、そんなにじろじろ見るものでもないし、かと言ってあからさまに目をそらすのもなんだか変だ。
とにかく、服を着てもらうのが手っ取り早そうだと、そう思ったのだ。
「あ、すいません…」
そう言った本沢は、ベッドを降り、まるで自分の家かのようにリビングに出ていき、簡単にシャツを見つけ出していた。
その様子を見た三波は、顔を曇らせる。
昨日、自分が記憶が無い間に一体何があったのか。
どこまで、本沢に知られたのか。それとも、知られていないのか。
三波はそれが気になって仕方なかった。
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