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episode.73 ラッキースケベ
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〜本沢side〜
夜、三波に付き合って深夜まで飲み、三波が服を脱ぎだしたので慌ててバスルームに押しこみ、もう帰ろう、と思っていたとき。
バスローブをきて出てきた三波に、ぎゅっ、と腕を掴まれた。
"おいて、いかないで"
静かにそう言った三波に、その手を振りほどく気はなくなってしまった。
仕方なくこの家にとどまることにしたのだが、その後腕を離してもらえず、一緒に寝るはめに。
いつも風呂上がり以降は上裸で過ごしている本沢は、何の気なしに服を脱いだ。
ベッドに呼ばれたので一緒に入り、理性と戦いつつ入眠。
そして朝。
状況はすっかり頭から抜けていた。
軋んだベッドに、誰かまた連れ込んだっけ、などと思い、まだ朝が早いのだから起こすな、と不機嫌になる。
「…んだよ…まだ朝早いだろ…寝てろ。」
相手を引き寄せ、ベッドに戻すと、その誰かは困惑した。
「ええと…本沢くん。その、俺が悪かったとは思うんだが、離してもらってもいいかな?」
「あぁ…?」
妙に聞き覚えのある声。
心地の良い、落ち着いた声だ。
「…あ?」
きちんと覚醒した本沢は、サァァと青ざめた。
「…うわ、俺なんか言ってました?」
「ううん。なにも。」
ふふふ、と笑うのは昨晩酔っ払っていた三波。
本沢は思わず、絶対嘘じゃん、と呟いた。
「あ、その…俺、昨日のことはあまり覚えてなくて…もしかしてとんでもなく迷惑をかけてしまったんじゃないかと、思うんだが…」
迷惑、ではなかった。
が、困ったのは確かだ。
片思いの相手と一晩過ごすのは、少し辛い。
「………………や、そんなことないです。」
少し間をあけてしまったのは、気持ちを悟られたくなかったため。
何も無かったとはいえ、同じベッドで寝てしまった。
いわゆるラッキースケベ的な展開だ。
本沢も少しばかり浮かれていた。
三波に近づけた気がしたのだ。
「どうお詫びしたらいいだろう…こんな、おっさんの部屋に来させて、一晩過ごさせてしまった…それも…」
同じベッドで寝たことは、三波としてはあまりいいことでなかったのだろう。
落ち込んだ顔をした。
「いや別に…俺も30過ぎてるからおっさんですし、一晩過ごしたのはむしろこっちがすいませんって感じだし…」
三波と過ごせたのは嬉しかったし、昨日、三波が抱えているものの片鱗が見えた気もした。
有意義な時間だった。
というかむしろ、こんな三波を他のやつらに見せたくない。
そんなことがあったら、嫉妬でイライラしてしまいそうだ。
「でもやっぱり、同じベッドで寝るなんて…」
そう言って俯く三波。
「…まあそれは、ちょっと…」
本沢は珍しくもごもごと口ごもり、目線を彷徨わせた。
寝る直前までスリスリと甘えてきたのを思い出すと、同じベッドだったのは少し辛かったな、と思う。
嫌だった訳では無い。むしろその逆だ。
「その、お詫びといってはなんだけど、なにか食事でも奢ろうか…?いやでもそれも…おじさんと出かけるのは楽しくもないよな…」
どうやら三波は、色々と勘違いしているらしい。
とにかくこれは、二人きりで過ごす回数を重ねて、思っていることをきちんと伝えなければ。
本沢はそう思った。
「いや、食事行きましょうよ。」
そのために、食事は願ってもない展開。
もっと仲良くなるためには、やはり二人きりの時間が必要だ。
「いつがいいかな?本沢くんに合わせるよ。」
「いやいや、あなたも忙しいでしょう…まあ、急ぎませんから。ゆっくり考えましょうよ。」
「あぁ、うん。」
そうは言ったものの、出来るだけ早く行きたい。
そして次の約束も取り付けたい。
本沢がそんなことを考えていると、そっぽを向いた三波が、口を開いた。
「…ところで、本沢くん。」
「はい?」
「そろそろ、服を…着てくれないだろうか。」
何も気にしていなかったが、そういえば上裸だった。
「あ、すいません…」
確か昨晩、リビングにあったソファに服を置かせてもらったはず。
そう思い、ベッドを降りて扉を開けた。
それにしても、なんだろうか、あの男。
どうも可愛すぎやしないか。
大学の時はもっと物静かで、ミステリアスな感じだったが、2人で話してみると結構お茶目な上、酔ったら甘えただ。
「…はー…」
(ますます落としてえ…)
あんな顔、他のやつに見せて欲しくない。
俺だけに見せてほしい。
本沢は、そう思った。
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