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episode.74 ケーキバイキング
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〜本沢side〜
2月16日 16時
(………え?)
「…あの、やはりダメでしたかね…?」
思ったより早く都合がつき、約束の三波との食事の日。
ホテルに行く、というのでスーツに革靴に、としっかり準備してきた。
もちろん三波もそういう格好だった。
てっきりホテルのレストランでの食事だと、そう思い込んでいたのだけど、三波が立ち止まったのは。
(ケーキ、バイキング…)
リーズナブルな価格のケーキバイキング。
どうりで夕食の時間よりはだいぶ早かったわけだ。
「その、興味があったのですが、私一人では場違いかな、と…君なら、その容姿ですから、問題ないかと思って、誘ってしまいました…もし嫌なら、すぐに店を変えますが…」
「あ、いえ、構いませんよ。」
「ほんとですか…!」
パァッ、と顔を明るくする三波に、本沢はんんっ、と咳払いする。
「その、入りましょうか。」
「はいっ、そうですね!」
また、新たな一面を知ってしまった。
それも、可愛い一面を。
「ここのモンブランは絶品らしいのですが…本沢くんはこういったところに来たことは?」
「あー、まあ…なくはないです。」
デートで付き合わされたこともあるし、セックスした後に奢らされたこともある。
自分はあまり楽しくなかったし、覚えてないので、来た、と言い切るのは不安だが。
「そうですか。君は女性から人気ですからね…きっとデートとかですね?」
三波はそう言ってくすくす笑う。
こういうところを見ると、自分は恋愛対象になっていないな、と実感する。
「私はこういった所には縁がなくて…今、ちょっとワクワクしてます。」
だが今はまあ、この人と二人きりで出かけられることに喜びを感じる。
三波のプライベートを知るものは、大学にはいなかった。
つまりこれは。
(俺が大学内では1番仲いいってこと、だよな。)
今はこれで、十分。
本沢がそう自分に言い聞かせていたとき。
「本沢?」
なにやら聞き覚えのある声。
「なんでお前こんなとこにいんの?」
この失礼な話し方は。
「……林、てめえこそなんでここにいる?!」
ぐっと距離を縮め、三波には聞こえない声でそう言う。
三波からは奏多が見えていないのか、ケーキを取るのに夢中だ。
そんなところも可愛い。
違う、今はそこではない。
「なんでって、デートだけど。」
そう言う奏多の背後には、確かに可愛らしい女がいる。
奏多の好みの子だ。
「そうかそうか。では会わなかったことにしよう。」
「え、まあ、いいけど…お前もデートかよ?」
「違う。そんなんじゃねえからほっとけ。」
「はいはい。」
奏多も、デート中に教授に会うなんて気まずいことは避けたいだろう。
お互いのためにこれでいい。
「どうかしましたか?知り合いでも?」
「いえ。」
何食わぬ顔で三波のところに戻り、ニコリと笑う。
三波のお皿にはお目当てのモンブランと、他にもいくつかケーキが乗っている。
「本沢くんは何を?」
「あー、俺はショートケーキで。」
「はい、どうぞ。」
ショートケーキを取ってくれる三波。
いつもと違い、ふわふわした空気に包まれている。
(くそ可愛いな…)
こんなにケーキが似合うアラフォーは他にいないだろう。
そんなことを思いつつ、2人で席に戻る。
「あれ…三波教授?」
「おや、鈴村さん。」
「……本沢ぁ、てめえなんでこの席使ってんだ?!」
「それはこっちのセリフだぞ林。」
偶然ですね!しかも隣の席!!なんて喜ぶ2人をよそに、奏多と本沢は頭を抱えた。
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