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episode.75 三波と月乃
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〜奏多side〜
「ね、ねえ?なんで月乃が三波教授知ってるの?」
三波はマーケティング論の教授だ。
そして商学部の教授。
看護学部の月乃が知っているのは不思議だった。
「ん?あー、三波教授は天文学に詳しいから。」
「「天文学?」」
本沢と声がかぶり、顔を見合わせる。
今回、2人の利害は一致していると思う。
どういう訳か、本沢は三波と2人になりたいらしいし、奏多もせっかくの月乃とのデートを邪魔されたくはない。
「ええ。昔、やっていたんですよ、天文学。」
懐かしそうに目を細める三波。
ただでさえ、いつも眠たそうな目が細くなった。
「月乃って、天文サークルなんか入ってた?」
「たまに顔出す程度だけどね。」
そういえば、夜遅い日がある。
そういう日は天体観測でもしているのだろうか。
「三波教授はサークルのお手伝いしてくれてるから、他の教授よりよく話してるの。」
「鈴村さんと話していると退屈しませんよ。とても賢い学生です。」
奏多に向かって話している月乃と、本沢に向かって話している三波。
奏多と本沢は、それを聞いて、また顔を見合わせた。
(どうやらこの2人、かなり仲良いらしいな。)
(だな。月乃に楽しんでもらいたいし、できたらこのまま一緒にいたいんだけど。)
(同感。今回ばかりはお前の意見に賛成。)
(おい一言余計だぞ。)
ここまで、目だけで会話すること5秒。
「じゃあ、せっかくだしご一緒しません?こうやって席も近いことだし…」
「…え、いいの?奏多。」
「もちろん。月乃その方が楽しいでしょ。」
にこ、と笑ってみせると、月乃は珍しく素直に微笑む。
「ありがと。」
(うっわー、今の結構キた!!月乃めっちゃ可愛い!)
「私はもちろん構いませんが…本沢くんはいいのですか?」
「まあ、学生と一緒にってのはちょっと心配ですけど…たまたま会っただけだし…俺は三波教授に合わせますよ。」
「じゃあ決まりっすね。あ、俺、商学部の…」
「林くんですね。本沢くんの資料整理をしているとか。」
さすが。噂に聞いたとおり、生徒の情報はかなり掴んでいる。
「はい。これから教わることになると思うので…よろしくお願いします。」
ペコッと頭を下げると、三波は微笑んで頷いた。
なんだよ、俺と随分態度が違うな?
と、本沢の目線が言っている気がしたが、それは無視した。
「ああ、本沢くんは、鈴村さんを知りませんよね。看護学部の鈴村月乃さんです。」
「鈴村です。よろしくお願いします。」
「あぁ…よろしく。」
「念の為言っておきますけど、私は奏多の彼女じゃないんで。」
「…あ、そうなんだ。」
本沢は、振られてんじゃねえか、とでも言いたげにニヤニヤとこちらを見てくる。
腹が立つ。
「月乃ぉ…わざわざ言わなくても…」
しゅん、と項垂れると月乃に呆れられる。
「そのへんはちゃんとしたいの。」
「鈴村さんはモテますね。」
「やめてくださいよ三波教授。」
困ったように笑う月乃と、楽しそうな三波。
見ていて嫉妬のような嫌な気は少しもしないし、むしろなんだか微笑ましい。
この2人の空気がそうさせるのだろうか。
本沢もそれは同じことのようだった。
「鈴村さんは医療系学部生に大人気ですよ。それに天文サークルでも…」
確かに、月乃は医療系学部生にとても人気だ。
もちろん、ほかの学部にも。
「でも、その中にはいないようですね。先日話してくれたような方は…」
真剣な顔をした三波に、月乃は微笑む。
何だかとても、儚い笑顔だった。
「そう、ですね。いい加減諦めればいいんですけど、どうしても無理で。理想としてだけでも、残しておこうって、そんな気分になっちゃうんです。」
好きな人の話なのはわかった。
そして三波が知っている理由は、この包容力に月乃が縋ったからだということも分かった。
月乃は母子家庭だ。
父親、男からの優しさには慣れていない。だからこそ敏感だ。
三波の優しさは上辺だけでも、作りものでもないと、月乃はわかったのだろう。
恐らく、奏多にあまり取り合ってくれないのは、奏多が月乃に本気でないことがバレているからだ。
恋人にする気は無い。所詮周りと同じ、女遊びの相手。
それが月乃にはわかるのだろう。
でも奏多は、月乃を口説く。
絶対に、絶対におちてこないから。
知夏を口説くのも同じ理由だ。
そう、本気にされては、愛されては困るのだ。
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