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episode.88 早朝
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〜賢杜side〜
翌朝。
笹倉が指定してきた時間は9時だったため、賢杜は7時半に1度会社に行き、そこから笹倉グループに向かう予定だった。
そのため、起きたのは5時半。
リビングに行くと、机に突っ伏して寝ている陽生と、ウトウトしている智夜、そして資料とにらめっこしながら今にも寝てしまいそうな奏多がいた。
「寝なかったのか?」
「ん……あー、おはよ……」
質問の答えになっていない。
「こいつらしばらく泊まるんだろ?なら焦ってやることないだろ。」
「ん……なんか、ちょっと気になるとこあって…調べてたら止まらなくなった…」
ふぁ、とあくびをしながらそう言う奏多。
「ちょっとは寝たんだけどな……」
恐らく仮眠程度のものだろう。
やり始めると集中力があるのは奏多の良いところだと知夏が言っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
「出かけるの?」
「あぁ、今日は会合がある。」
「ふーん……帰り遅い?」
「なぜだ?」
「お前の去年のレポートの資料見てみたいなって、思った。」
「残ってないぞ。」
「えっ。まじかー……分野若干被ってるから参考になるかと思ったのに…」
うーん、と頭を抱える奏多に、何とかしてやってもいいか、という気になる。
「……悠汰に聞いてやろうか?あいつ、基本的には資料もレポートも全部取ってあるはずだから。」
「え、まじ?聞いてほしい…いい?」
「あぁ。会社帰りに持って帰ってきてやる。」
「わー、ありがと、助かる。」
こういう点では、奏多は本当に素直だし、礼儀もわきまえている。
普段の態度からは想像がつかないが。
「あまり生活バランスを崩すなよ。」
「ん、わかってる……」
奏多はふぁ、とまたあくびをする。
賢杜はそれを横目にバスルームに向かった。
サッとシャワーを浴び、髪を整えてリビングに戻る。
「……は?」
思わず声を出してしまった。
さっきまで起きていた奏多は、限界を迎えたらしく眠っていた。
それは別に構わない。というかむしろ寝ろ、と思った。
だが、その奏多が、智夜に寄りかかるようにして寝ている。
智夜もそれを嫌がるでもうざがるでもなく、そのままにしているし、智夜自身も完全に寝ていた。
安心しきって体を預けているのを見ると、なんだかモヤッとした。
自分はそれ以上のことをしているのに、勝てていないような、そんな感じがするのだ。
「チッ……」
賢杜は奏多を抱き上げ、奏多の部屋に向かった。
そのまま寝かせておくなんて嫌だった。
そう、だって、風邪でも引かれたら知夏がまた心配する。
それに面倒を見るのを手伝わされるし。
こたつで寝られて風邪を引かれたら自分には利益がない。
そう、これは奏多が風邪を引かないため。
自分にそう言い聞かせ、奏多をベッドまで運んだ。
それから、さすがにあの2人もそのままにしておくのははばかられたので、毛布だけかけてやった。
これで奏多を特別扱いしたわけではない。
奏多には部屋があるから運んだまで。
奏多の部屋に2人は寝かせると言っていたが、さすがに勝手には入れられない。
これが現在の最善策であり、後に自分に面倒なことが降り掛かってこないようにできる。
賢杜はそれで納得した。
言い訳のように、奏多は特別ではない、と自分に言い聞かせている時点で、特別であることを、賢杜はよく分かっていなかった。
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