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episode.91 重みと温もり
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〜奏多side〜
「……ねえ、なんでこんなことになってんの?」
「んー……俺に聞かれても困るなぁ…」
苦笑いする陽生と、なんだか少し楽しそうな知夏を前に、奏多はムスッとしていた。
「トモはいいとしても、なんでこいつまで?」
「賢杜も疲れてたんじゃないの?上位グループとの会合だって言ってたし。」
知夏がそう言うが、奏多は納得いかない。
夕食を終え、涼は月乃を迎えに、奏多たちはレポートを再開した。
無事にレポートが終了したところで、智夜が眠気の限界を迎えた。
奏多は智夜には色々と世話になったし、と思い、膝貸してやろうかと言ったところ、そこでそのまま寝始めた。
それはいいのだ。
眠くなると、とにかくどこでもいいから寝たくなる智夜の
ことだから、膝枕することになると分かっていて提案した。
これは奏多の想定内。問題はそのあとだ。
「俺、内田には膝貸してやるって言ってない。第一自分の部屋あるんだから、部屋に戻ればいいじゃん。」
同じこたつに入って、iPadで仕事をしていた賢杜が、それを辞めたかと思えば奏多の膝に寝転がったのだ。
そのおかげで、奏多の左には智夜、右には賢杜が寝ている。
「まあいいんじゃない?2人とも気持ちよさそうに寝てるし。」
奏多からは見えない寝顔を見ている陽生がそう言う。
「賢杜が人前で寝るなんて珍しいし、よっぽど疲れてるのね。少し大目に見てあげて?」
知夏にそう言われては、これ以上文句は言えない。
これが月乃や知夏なら、奏多だってもっと喜んでするのに、とは思ってしまうが。
「知夏姉さんがそう言うなら……我慢するけど…」
「紅茶でもいれる?」
不貞腐れる奏多に、知夏が優しくそう言ってくれる。
「うん。」
「遠藤くんも紅茶でいいかしら?」
「はい!」
知夏がキッチンに向かう。
2人に膝枕をしているために足をこたつにしまえない奏多は、そろそろ冷えてきたので紅茶はありがたかった。
賢杜が体の向きを変え、奏多の方にも寝顔が見える。
イケメンは寝ていてもイケメンらしい。
こうして見ると、少し可愛いような気がしてくる。
膝枕なんかで気持ちよさそうに寝て、無防備な姿を見せてくれていると思うと、気分は悪くない。
「ふふ、奏多優しい顔してる。」
「そりゃトモに怖い顔することないじゃん。」
「内田さんの方見てるじゃん。」
「はぁ?そんなことねえし。」
クスリと笑う陽生に言い返す。
別にこれは、賢杜にも求められたから仕方なくしてやっただけで。
考え方を変えれば悪い気もしないというだけの話。
それ以上ない。
「……てか重い。」
「そうよね。さすがに2人は辛いわよね。」
紅茶をいれて戻ってきた知夏がそう言う。
「涼が帰ってきたら、一旦起こしましょうか。」
「涼兄早くー……」
そう言いつつ、足に感じる温もりはいいかもしれないと思っている自分がいる。
智夜がとか、賢杜が、とか関係なく、この人肌の温度が、心地よい。
これに慣れてはダメなのに。
「智夜は寝起きいいけど、内田さんはどうなんですか?」
「寝起きは割といい方じゃないかなぁ…朝から仕事とかもよくあるみたいだから。」
「奏多はあんまり朝得意じゃないよね。」
「ふふ、そうね。」
低血圧気味の奏多にとって、朝は辛い。
起きられないわけではないのだけれど、少しだるかったりするのだ。
そんな他愛もない話をし、紅茶を飲みながら待つこと15分。
玄関から涼と月乃の声が聞こえてくる。
「あれま。」
「……珍しい。明日雪?」
リビングの様子を見るなり、そう言う2人。
賢杜が人前で寝ることは確かに珍しい。けれど奏多はそれよりも、早く退けたい思いでいっぱいだ。
足が痺れそうなのだ。
「南方くんは奏多の部屋を貸すんだっけ?」
「うん。陽生も俺の部屋な。」
「おっけ。とーもーや。起きてー!」
「ん…………ごめん、今何時……」
揺すられてすぐに起きた智夜が体を起こしながらそう言う。
「もうすぐ23時30分。」
「カナ、悪い……重かっただろ。」
「んーん、平気。俺の部屋のベッドと、布団使って寝て!」
「ん……」
「智夜は俺に任せて!」
起きたとはいえ、まだ眠そうな智夜を連れて、陽生が2階に上がっていく。
「賢杜、賢杜ー。1回起きてー。」
涼が呼び掛けながら賢杜を揺する。
賢杜は眉間に皺を寄せながら目を開け、膝枕に気がついてフリーズした。
「……俺は、寝る前何を。」
「自分から横になってきたんだろ。早く起きろ、重い。」
ぐいっと押しのけるようにすると、賢杜がやっと体を起こす。
「賢杜1人で部屋行ける?」
「…大丈夫だ。」
「じゃあ俺も寝る。知夏姉さん、月乃おやすみ!涼兄もおやすみー。」
「ん、奏多おやすみ。」
「おやすみ奏多。」
「おやすみー。」
奏多は3人に挨拶し、賢杜の部屋に入る。
それからすぐ、賢杜も部屋に入ってきた。
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