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episode.94 留守番組
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〜賢杜side〜
シェアハウスに残ったのは、賢杜、涼、智夜。
奏多や知夏がいなければ涼も黙っているし、話し始めるような人もおらず、ひたすら沈黙が続いていた。
賢杜はiPadで次の企画について考えており、智夜はスマホを弄り、涼は本を読んでいる。
同じ場所にいる意味など全く感じないが、こたつがあるからいる、というところだ。
普通の人間なら気まずくなるのだろうが、この3人ではそれもなく、ただただ沈黙。
iPadやスマホは音もならないし、部屋にある音といえば暖房くらいだ。
『あぁぁぁぁんっ!』
それが2時間ほど続いていた時、突然響いた喘ぎ声。
音の発生源は智夜のスマホだったのだが、スマホを持っていた智夜自身も驚き、もちろん聞いていた賢杜と涼も驚いた。
「……すんません。」
「ぷっ……ははっ、あはははは!」
涼が堪えきれなくなって笑いだし、智夜は困ったような顔をする。
「AV見るならイヤホンくらいしとけ。」
そしてなぜか、真剣にアドバイスする賢杜。
だがそれに突っ込むものなどいない。
「いや……広告からサイトとんじゃって……」
いきなりAVが始まるサイトにとんだのも災難だが、そもそもそんなことあるのか、と賢杜は思う。
それから、そういえば広告のバナーは邪魔だな、と思い、目をつけたら面白いのではないか、という発想に至った。
思わぬ所で、企画のヒントになるものを得た。
「いやぁ、面白すぎた……」
しばらく笑っていた涼が、はぁ、と息をついてそう言う。
「南方くんもびっくりしてた顔最高だったよ。」
涼はまだクスクス笑っている。
そんなに面白かったのだろうか。
「まじで忘れてください……」
智夜がため息をついたところで、涼のスマホに着信が入った。
画面を見てから、涼が電話に出る。
「ちー?どうしたの?」
相手は知夏だったらしい。
「え"っ、嘘。」
(…すごい声だな。)
「じゃあそっち行くよ。荷物も結構多いでしょ?……うん、賢杜に頼むから。うん。はーい。」
「どうした?」
涼が電話を切ったのを見て声をかける。
「なんか、美味しそうなオムライス屋さん見つけたんだって。」
「……は?」
「それで、そこでお昼ご飯食べようって話になったらしいんだけど…俺たちじゃまともな昼ごはん用意出来ないでしょ?」
困ったように笑う涼。
そもそも冷蔵庫にはあまり食材がなかったし、賢杜はとても得意とは言えない。
智夜はどうか知らないが、彼は客だ。
「まあ、俺がチャーハンくらい作ってもいいんだけど、このあとも買い物するらしいから。奏多だけじゃ大変かなぁと思って、そっち行くって話した。」
「それで俺の車か。」
「うん。南方くんもそれでいい?」
「はい。」
「ごめんねー。奏多がどうしてもオムライス食べたいんだって。」
「カナ、嫌なことあった後とかオムライス食ってるから……多分、好きなんですよね。」
「そうなんだ。奏多、ちーと月乃の料理はなんでも美味しいー!って食べてるから、あんま好き嫌いってないものだと思ってたよ。」
こたつの上を軽く片しながらそんな話をする2人。
賢杜には正直わからない話だった。
奏多のことをそこまで見ていないし、好きなものや嫌いなものは把握していない。
「カナは甘いものとか好きですよ。」
「あー、それはちょっとわかるかも。」
「嬉しそうな顔しますよね。」
「うんうん。」
奏多の顔を思い出しているのか、涼は微笑んで頷く。
これも、賢杜には思い出せないものだった。
「準備できたら行くぞ。」
「うん、コートとか着たら玄関のとこね。」
部屋に戻り、グレーのチェスターコートを手にとる。
スマホと財布、車のキーと家の鍵という必要最低限のものだけ持って、玄関に向かう。
先に玄関に着いた賢杜は、持っていたスマホを開き、メモアプリを起動した。
好きなもの:オムライス、スイーツ
簡潔に記したメモを保存し、アプリを閉じる。
そう、これも、あいつの新しい表情を見るため。
賢杜は自分にそう言い、納得した。
「お待たせ、行こうか。」
「あぁ。」
2人も来て、家を出て奏多と知夏のところに向かった。
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