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跳び箱編『第5話』
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市川が怪訝な目でこちらを見てくる。
「どうした、笹野?」
「…………」
どうしたじゃない、跳べないことを悟れ。
そう言いたかったけれど、仮にも教師である市川に暴言を吐くのは得策じゃない。
夏樹は小さく呟いた。
「……すみません、できません」
できないものは仕方ない。誰にだって苦手なことはあるんだから。無理なものは無理だ。
半ば開き直るような態度で、くるりと跳び箱に背を向けた。
ところが、市川は溜息混じりにこんなことを言い出した。
「じゃあお前、今日の放課後補習な」
「……えっ?」
「『えっ?』じゃないって。授業終わったら着替えてここに来いよ? 待ってるから」
「ええ? なんで俺だけ!?」
「そりゃ、お前だけ跳んでくれないからだろ。成績『1』になってもいいの?」
「…………」
それは嫌だ。自分の成績表に「1」がつくなんて冗談じゃない。苦手な科目だったとしても、せめて「2」は欲しい。
市川は更に言った。
「俺だって可愛い生徒の成績表に『1』はつけたくないからな。ちゃんと補習受ければ最低でも『2』はつけてやるから、サボらずに来いよ? サボったら『1』にしちゃうからな」
「…………」
「返事は?」
「……わかりましたよ」
成績を盾にされてしまっては、嫌とは言えなかった。
夏樹は渋々頷いた。
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