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生徒会の一日。―昶録―
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連載「BLOODY TARGET」の颯都が編入する前のとある1日。
高級感溢れる家具と調度品で構成された、気品の漂う生徒会の庶務室。
しかし今は、膨大な量の書類の山と陰鬱な空気でその外観は損なわれていた。
変わる事のない空気は淀み、また沈澱していく。
僅かながら動きがあるのは、パソコンを操作している特徴的な赤髪の会長と、書類の束を読むお堅い副会長。
そしてオレは、ビクともせずに机にうなだれていた。
「…まだ見付からないのか」
「…そう言う会長は~?」
「……俺が突き止められない事なんてこの世にはない」
「そう言って…全然見つからないんだけど~?」
そしてまた、重い沈黙。
「…今回の学力試験は受けられそうにないですね」
副会長は疲労した眼球を閉じ、ため息と共に呟いた。
「…オレ的には、試験は半永久的に免除でいいんだけど~」
オレは机に突っ伏したままだるさを全面的に押し出す。
「馬鹿か。免除された分仕事しろ」
「…ちぇ~」
一番広いデスクで休まず手を動かす会長に指摘され、怠業に身体を起こす。
そして、赤い眼鏡のフレームの奥の黒い眼を見た。
実質的に学園を仕切り、月杜学園唯一の純血種として降臨するこの男は、物事に執着しない。
その価値基準は、自分に利益があるか不利益か…それだけで物事を推し量っているように思えた。
誰しも無意識下でやっている事だが、この男のそれは酷く打算的だった。
欲しい物は力ずくで手に入れ、要らない物は見向きもせず切り捨てる。
絶対的な地位に上り詰め、富・名声・人の心…欲しい物を全て自分の物としてきた、勝ち組だからこその揺るがない自信。
気まぐれに傲慢に人々の心を魅力し、操り、屈服させる。
気が付けば、蜘蛛の巣に掛かる哀れな獲物達のようになる。
…逃れられなくなる。
そうして全てを持っている学園の要が、どうしてここまで一つの事に固執しているのだろう。
負け知らずだからか?
いや、だからといって、損得勘定でいけば得は少ないであろうこの調べに睡眠時間を削り、トップを他に譲ってまでする意味はあるのだろうか。
「…会長、」
「黙れ。仕事しろ」
質問する前に遮られ、意力を損なわれた。
また机にうなだれる。
――五十嵐颯都。
月杜学園には珍しい、外部からの編入生。
しかし今までの編入生とは何かが違う。
情報が一つも見当たらないのだ。
唯一知らされたのは、「理事長の遠い親戚」という情報だけ。
それを元に調べても、生徒会の緻密な情報網を持っても調べがつかない。一週間もだ。
ため息を吐く事も諦める程、状況は平行線を辿っている。
こだわる理由なんて、さっぱりだ。
オレは無言で席を立ち上がる。
「何処に行くんですか?」
「どこって、トイレだよ~、ウォータークローゼット」
鋭く突き刺さる柳色の目線をすり抜けて部屋から出た。
「その前に…ちょっと補給しとこっかな」
口元が緩むのを感じながら、足取りは軽かった。
(何故止めないんです?…暫く戻って来ませんよ)
(やる気のない馬鹿がいなくなって丁度いい)
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