アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
act2-3.学校祭③(挿絵)
-
「……お前、俺のことが好きなのか?」
びゅうびゅうと風が吹く。さっきまでこんなに吹き荒れてはいなかった。いや、俺がこの急に静かになった場におかれて、今まで意識していなかったものに意識を向けて気を紛らわせているだけかもしれない。
瞳を隠すために長く伸ばした前髪が風に乗せられて、視界を遮る。格子越しに見ているように、葵の顔がよく見えない。
「それを訊いて俺にどう言ってほしいの?」
風が急に吹き上げて、視界を邪魔する前髪がはける。ぱあっと明るくなる視界の中に立つ葵は、美しい青空を背に、まるで刑事ドラマの悪役が最後に見せる笑みのような複雑な表情をのぞかせている。
「どう、って……」
深い赤紫色の双眸が揺れる。夏のかげろうよりずっと、ぐにゃぐにゃ、ゆらゆら。
「好きだよ、夏陽」
ドクン、と聞こえた気さえした。胸が痛い。締め付けられるように痛い。まるで葵に心臓を掴まれてしまったように痛み、苦しい。全身の血が燃えているようにからだが熱い。それなのに指先はきゅんと冷えて、感覚が鈍くなる。
「……って、言ってほしいのかな?」
葵がいつも通りににこっと笑う。いつもの俺をからかう時の顔だ。
「お、お、お前、お前なああああ!!!!」
本気にしただろ!と言いかけてぐっと言葉を飲み込む。バカ俺、そんなことを言ったら一生このネタで遊ばれる……!
「くくっ、あは、だまされちゃって…!フ、フフ、あはは!」
「わーーーらーーーーうーーーなーーーー!!!!!」
葵がけらけら笑う。嘘みたいにさわやかな笑顔が眩しいが、そのわけを考えるとなんて憎たらしい笑みだ。
(それにしても今日はやけに機嫌がいいな?よく笑う……)
ほらもう戻るぞ、と強引に葵の手を引く。葵は放そうとしない。黙って後ろをついてくる葵の手はいやに冷たかった。
「……すきだよ」
「ハイハイ、もうだまされねえぞ」
「好きだよ」
「だまされねえって」
「……うん」
びゅうびゅうと耳障りな風が吹いている。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 22