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オンリーワンでナンバーワン
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「らららーららーらら、らららーららーら♪」
「おい」
「…ん?」
俺が気持ちよく口ずさんでいると、ひょっこり覗いた彼に遮断される。
「お前、その歌好きなのか?」
「えっ…うん」
俺が口ずさんでいたのは、少し前に解散してしまった国民的アイドルグループの代表曲。
「いい歌じゃない?」
「どこが」
「ナンバーワンにならなくてもいいなんて、なんか、勇気付けられるし?」
日本人なら誰でも知ってるんじゃないかと思うほど、有名な歌だ。
「…俺は、嫌いだ」
「え?」
少し無愛想に、とはいってもそれがいつも通りなのだけど、彼はそう言った。
「なんで?」
「どうせなら、ナンバーワンを目指すべきだ」
…そうだ、彼はこういう男だった。
「ナンバーワンにならなくてもいいなんて、ただの甘えだ。そもそも、花と人間じゃまるっきり違う生き物だ。そこを比較することが間違いだと思うが?」
いやいや、そこはただ例えてるだけじゃん。
そんなの…、おかしな歌は他にもたくさんあるよ。
けれど、それを言う気にはならない。
なぜなら、それを言ったところで彼が意見を曲げないことは、よーく知っているから。
「特別なオンリーワンだと?そりゃ同じ人間は誰一人いないからな。その中でナンバーワンになることに価値がある」
まぁ…それも一理あるけれど。
「オンリーワンでナンバーワンじゃ駄目なの?」
「何?」
「俺にとって…お前は、オンリーワンだし、ナンバーワンだよ」
「なっ…」
「たった一人の、特別な、一番大好きな恋人だもん。」
彼の目を見つめながらそう言うと、みるみる顔を赤く染めて、しまいには目を逸らした。
「照れてる」
「う、るさい!」
ストイックで常に上を目指す普段の彼の裏の顔。
実は、照れ屋。
クールに振る舞っているのは、ただの照れ隠し。
咳払いをして俺の方を向き、彼は言った。
「論点をすり替えるな!そういう話じゃないぞ…っ」
「そういう話でしょ?全ての人がオンリーワンで、誰かのナンバーワンなんだから」
「………」
黙ったまま、部屋を出ていこうとする。
「ちょっと?どこ行くの?」
「どこだっていいだろ。この話は終わりだっ!」
そう言い残し、振り向かず去っていく。
あーあ。
ほんと、可愛い…。
Fin.
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