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イライラとベンチ
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仕事で疲れてどうにもならなくなったとき。
俺はまっすぐ家には帰らず、近所の公園のベンチで缶ビールを飲んでから帰るのが癖になってた。
この公園は大きなマンションに囲まれているが、夜には殆ど人が居なくて居心地がいい。
今日も、俺は例の嫌な先輩に仕事を押し付けられて苛立っていた。
「あーくそ!あの野郎。いい加減自分の仕事は自分でやれよっ!」
何も言わず引き受けてしまう自分も悪いのは分かってるけど、無下に断れない自分がいる。
そんな自分にも腹が立つ。
こんなもやもやした気分の時は酒で忘れるに限る。
「隆臣。また、なんか落ち込んでんの?」
「うわぁっ?!」
全く足音とかしなかった。
声を掛けられて反射的に横を見るといつかの小学生がいた。
「おっ!お前っ!!いつかのキス魔の小学生!!」
「なんだよ、キス魔って。大人は訳わかんねー。」
隣にちゃっかり座る少年。
「ちょっ!こんな時間に出歩いて、お家の人が心配するでしょ。」
「落ち込んだら俺に言えって言っただろ、隆臣。」
呼び捨てかよ。
生意気な。
「あのなぁ…。」
「諒太。」
「え?」
「俺の名前。」
「諒太君、お家に帰りなさい。」
そう言うと、頬を膨らませてふてくされる。
「子供扱いかよ。待ってろ、直ぐ大人になってやるから。」
「はいはい。いつになることやら。」
「隆臣。」
「はい?」
名前を呼ばれて、顔を無理矢理、諒太君の方にむかせられる。
そのままキス。
触れるだけの軽い口づけ。
「おい、大人をからかうのはやめなさい。」
「からかってない!俺は隆臣を慰めたいだけ。」
諒太君はすっくと立ち上がると、公園の入り口に向かって走り出した。
「落ち込んでたらまた来るから!」
何度か振り返りつつ走っていった諒太君は、やがて暗闇の向こうへ消えた。
一体なんだったんだ?
でも不思議なんだ。
あの子がくると、なんだか腹が立っていたことをうっかり忘れてしまうんだ。
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