アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
進路
-
高校に入ると、諒太君はテスト勉強だと言って会える日がぐっと減った。
受験が終わったらもっと会えると思ってただけにがっかりが大きい。
それでも、テストが終わると必ずあの公園にきてくれた。
そして、俺も甲斐甲斐しく諒太君がくるのを待っていた。
俺、もう完全に諒太君のとりこだよ。
その日は冬に差し掛かった頃で、いつも以上に寒かった。
そんな日は特に会いたくなる。
人恋しいっていうか、なんかそんな感じ。
電車に乗って家に帰る途中、ポケットに入れていた携帯が振動した。
ディスプレイには諒太君からメッセージが届いている事を知らせる表示。
ロックを解除すると、『今日、会いたい』って一言。
胸が弾む。
俺も会いたい。
『公園に行くよ。』
そう返信して、また携帯をポケットにしまう。
これだけで何気ない帰り道が楽しくなる。
俺もなんか高校生みたいな気分だ。
公園に着くと、すでに諒太君があのベンチに座っていた。
いつもなら俺がこのベンチに座るといつの間にやら諒太君がくるという流れなんだけど。
「やぁ。今日は先に来てたんだね。寒くない?」
「おかえりなさい。早く会いたくて待ちきれなかったからここで待ってた。」
諒太君の隣に座る。
出会った時にはまだちびっこだった諒太君の身長はとっくに俺を越していた。
「ね、隆臣。」
「ん?」
不安そうな顔。
なんだろう?
「俺の進路なんだけどさ。」
「うん。」
「県外の大学を受けようと思ってるんだ。」
「うん。」
進路、か。
今が一番大事な時期だよね。
諒太君がもし県外の大学に行く事になったらここでこうして会える事もなくなっちゃうんだろうな。
そんな風に思うと少し寂しい。
「そしたら、さ。隆臣がここで泣いてても来れなくなっちゃう。」
「ははは。俺の事は気にしなくても大丈夫だよ。」
「隆臣は俺が居なくても平気?」
平気、ではないかも。
だけど。
「君の進路の方が大事だよ。」
「隆臣。」
ぎゅって抱きしめられる。
出会った頃から生意気で、大人びててこんな風に心細そうな顔見た事がなかったからちょっと驚いた。
「隆臣と離れたら、隆臣が俺の事忘れちゃうんじゃないかって不安なんだ。」
胸の奥が暖かい気持ちになる。
俺の肩に頭を乗せた諒太君の髪をそっと撫でてやる。
「忘れる事なんてないよ。」
忘れるなんてできない。
こんな風にずっと俺の事を思ってくれている人の事。
忘れられるはずがない。
「だから、安心して諒太君は自分の道を進んで。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 30