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言葉とは裏腹に
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なんてカッコつけて言ったのが昨日のことなんだけど。
やっぱり寂しい。
あー。
俺も転職でもして追いかけてっちゃおうかな。
なんて考えてみたりして。
いやでも、普通に考えたら女々しすぎるだろ、俺。
「あー!!」
って、思わず仕事中に声を上げてしまった。
「大丈夫?」
周りの人が心配して声をかけてくれる。
「や、大丈夫です。すいません。」
やばいやばい。
仕事、集中しなきゃ。
「おい。なんか根詰めてんのか?ちょっと息抜きするぞ。来い。」
ぐいっと俺の腕を引いたのは沢木さんだった。
「え、ちょっと。離してくださいって!」
「いいから、来いよ。」
「行きます!行きますからっ。」
沢木さんの手が離れる。
何も言わずに歩き続ける沢木さんの後をついていく。
沢木さんが向かったのは屋上だった。
ドアをあけると、冷たい風が頬を撫でた。
「なんか、あった?」
屋上の手すりに持たれてこっちを向いた沢木さん。
俺は、その少し手前に立っていた。
「いや、たいした事じゃないんですけど。ちょっと思う事があって。」
口ごもる。
「あの子の事?」
うっと言葉が詰まる。
「まぁ。そう…です。」
「んで?」
話を続けようとする。
これはもう言わなきゃいけない雰囲気かな。
「今、高校生なんですけどね。大会、県外のとこいこうかなって言ってて。離れちゃうの寂しいなって。いや、まだ先の話なんですけどね。」
だけど。
「だけど、俺、あの子の前だと変に大人ぶっちゃって、寂しいとか言えなくて。無理して頑張れとか言って、余計寂しくなっちゃってるんですよ。」
「そっか。」
ぐしゃっと頭を撫でられる。
「ちょっと、やめてくださいよっ。」
「俺ならお前の事、甘やかしてやれるぜ。ほら。」
俺の前で大きく腕を広げる。
「だっ、ダメです。」
ここで、この人に甘えるのは簡単だけど。
「俺、待つって約束したんです。」
「頑なだなー。ま、あんま無理すんな。」
ぽんって軽く俺の頭に手を置くと、沢木さんは屋上を降りていった。
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