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24. 人形
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偽物を消し終えた後、やっと本物が戻ってきた柳沢家…
一見、数年ぶりの再会を果たした幸せな家族のように見えるかもしれない。が、実際は違う
両親である2人が一方的に喜んでいるだけの、片思い状態。
『遥』は困惑した顔で、抱きついてくる母の肩を弱々しく押し返している
「遥、どうしたんだ?父さんと母さんだぞ?」
「そうよ、忘れちゃったの?母さんよ!」
忘れられてしまっていたら、と焦り出す2人。
だが、その焦っているようにみえる表情には遥は必ずこちら側に戻ってくる、という謎の確信が見え隠れしていた
2人の目が『メイドのせいで辛い思いをしたでしょう』という哀れみの感情で埋めつくされているのが分かる
けれど…遥は困惑した表情をしたまま、おどおどと対応に困るばかり
「あ、あの…僕を、家に帰してください…!」
覚悟を決めたように勢いをつけ、遥が放った言葉にふたりがピタリと凍りついた
「え…何を言っているの?家はここでしょう?」
母が信じられない、とでも言いたげな顔をして遥の肩を揺する
遥はそれを、先程よりも幾分が力を込めた手で離させると一気にまくし立てた
「僕が数年前、いなくなったのはあなた達の存在が嫌だったから。僕の意思で戻らなかったんです…!もう、僕には蒼矢さんがいます。ここには戻りません!」
自分の左手を握りしめ、喉奥から声を絞り出すようにして震えながら喋る遥
「ちがうわ…あなたはメイドのせいで行方不明に…」
母が、自分の中の『正しい』記憶をなぞるように口を開く、がその途中で言葉は小さく消えていった
僕の意思で、といった。
つまり遥は、自分で考えここから出たのだ
思いもしなかった、考えようともしなかった事実に唖然としたまま動けなくなる2人
あんな小さな子がどうやって一瞬で?などという疑問は遥が自分達を愛していなかった、という衝撃に頭の隅へと追いやられていた
遥が、震える口を小さく開く
「もう…」
…親の決めた相手以外とは遊ぶ事は許されず、決められた事を淡々とやるだけの日々。
2人の理想の体型を保つためと食事も制限され、健康の為だといつも酷く味の薄いものばかりで、お菓子等はほとんど口にした事がない
母の好みの服を着て、着せ替え人形のようだった。そんな状況では、自分が望んだ友達を作ることも叶わなかった
遊び相手はいつもメイドだけ、日焼けを避けるため室内から出ることさえもままならない生活
従わなければ、『罰』が下る
そんな僕は、彼らの可愛い可愛い『お人形』だった。
「もう、僕は、あの頃に戻りたくない…!」
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