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41.書斎
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その小さな花を見つめていると、目が熱くなってくる
「あは、なんでだろ…」
悲しい訳ではないのに、潤んでくる
前の世界にいた頃は毎日憂鬱だったけど、自分なりに、何か思い入れがあったのかもしれない
戻れなくなって、はじめて分かる
何か明確な理由がある訳ではないのに、どこか寂しく感じられる
「思い入れなんて、なんもないのに」
ジワリと滲んだ涙を拭い、本を閉じると部屋を出た
図書室から何個か右に、ほかのドアよりも豪華な雰囲気を纏ったアンティーク調のドアがあった
「…なんだろ」
少し隙間があいていたため、ドアを少しだけ押すと、ぎぃ、という音をたてながらドアが開いた
そっと覗くと、中もアンティーク調で書斎らしき部屋になっているのが見える
中に誰もいないのを確認し、そっと中へと入った
「うわ…」
難しい本がずらりと並ぶ本棚
部屋の奥角にある机には、作業途中の書類がのっている
窓からは時折緩やかな風が吹きカーテンを動かし、そこから薄く日が差し込んでいた
本や書類に囲まれているせいか、紙特有の匂いがほのかに香る
(なんか落ち着く…)
落ち着いた色合いの家具にかこまれているからだろうか
暫くぼーっと眺めているとウトウトしてきて、1つ大きな欠伸をすると眠りに落ちてしまった
「んー…ふわぁ…」
1時間くらいだろうか、よく寝たなぁ、と全身で伸びをしてからふと気づく
ん?
なんか人影が…
誰だろう、と顔を上に向けると_
父が、いた
「うへぇ…」
な、なんでいるんだ
思わず変な声が口からもれるが、父に気にした様子はない
目が合うが、じっと見つめてくるばかりでどうすればいいか分からなくて背中に冷や汗がつたう
いや、見つめると言うよりは凝視している、と言った方があっているかもしれない
これは、俺じゃなかったら泣くな
「あ、あの…」
「?」
「…あ〜」
一度普通に日本語で喋った後に、この口調になるのはちょっと恥ずかしく感じるが…まぁ仕方がない
「…なんでここにいる」
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