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42. アディ
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「自力で出てきたのか…?でもどうやって…」
流石に一人でこの部屋にいた事を心配に思ったのか、ブツブツと何やら考えはじめる
いや、心配…というよりは僕が一人で抜け出してきた、ということに興味をもったのかもしれない
うん、絶対そうだな
もし一人で行動したのがバレたら、必ず誰かと一緒にいないとダメ、とかなりそうで面倒だ
そしたら、迂闊に行動することも出来なくなってしまう
『大丈夫?』
「うん…え?」
父の横顔を見ながらどうしようかと考えていると、側からよく通る声で誰かに呼び掛けられた
そろり、と横に目をやると澄んだ色の瞳をした、ドールのような精霊がいた
クリっとした大きな目で、覗き込んでくる
思わず惚けてしまったが、ハッとして話しかけた
「えっと、君は…?」
『…アディ、だよ』
アディ…か。精霊にも名前ってあるんだな
まぁ、精霊自体さっき知ったんだけど
アディに気を取られていると、その隙にまだ考え込んだままの父は部屋を出ていってしまう
赤子を置いていくなよ…
そうは思うが、あの人だししょうがないか、と感じるようになった僕は感覚が少し麻痺しはじめているような気がする
「えっと、他の子達は?」
『んー?本棚だと思うヨ』
「本棚?」
本棚…図書室のことかな?
確かに図書室にいっぱい居たもんなぁ
「本棚かぁ、あの部屋が好きなの?」
『ウン、あの部屋にすンでるノ』
へぇ、図書室に住んでるのか。言葉だけ聞くとお洒落な気がしなくもない
父や母達は知ってるのか?
そういえば…
「アディは何でここにいるの?」
『気になったノヨ』
ふふっとその白目のほとんどないような、青で染まった目をスッと細める
「気になった?」
『ええ、アナタって不思議なんだもノ。そりゃ一番に見てみたいじゃない?みンなはまた後でっていってたケド』
不思議……僕が?
特に代わり映えのしない、普通の人間だと思うけど…
あー、もしかして転生したからとか?
特別な力でも宿ってたりしないかな
「不思議ねえわ…例えば?」
アヴィが細く整った人差し指を顎にあて、考える素振りをしながら言葉を紡ぎだした
『んー‥アナタの波長、すっごく心地いいノヨ』
「波長…?」
『えぇ、ソウ』
そう言うと綺麗な曲線を描きながら、僕の周りをくるくると飛び回るアディ
アディって羽根ないよな…
どうやって飛んでるんだろ
『波長のいい人間は好きヨ』
クスクス、と控えめに笑いながらそのどこまでも見透かされるような、深い青色の目を細める
綺麗だな…
『ホラ、そろそろお部屋に戻リましょ』
「‥うん、そうだね」
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