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視線
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「それは…なん、だ…?」
最初に言葉を発したのは父だった
普段見たことのない驚愕した表情をし、目を見開いたまま小さく言葉をこぼす
レヴィも同様、開いた口が塞がらないといったふうで微動だにしない
「魔法…だよ‥?」
少しだけ、自信をなくしてしまい断言できず疑問形になってしまう
「えっと…詠唱…は…?」
はっと我に返ったレヴィが、小さく問いかけてきて、何がダメだったのかが理解できた
詠唱…しなきゃまずかったのか
昔 精霊の本を読み漁ってた時に、まだ詠唱文が読めなくて口頭で精霊に頼んじゃってたから…
覚えるの、完全に忘れてた…
自分が異質なのかも知れない、と考えてしまった途端、一気に周りの目が自分を嫌悪しているように感じてしまう
全身が泡立つような感覚に包まれ、手の内に水球を保ったままの状態から動けない
どうすればいい?なんて言えばいい?
こういう時こそ冷静でいないとって分かっているのに、早く何か言わなければと焦ってしまう
「あ…」
周りの視線が突き刺さって、居たたまれずに小さく俯き目線を落とす
レウスに、また記憶を消してもらえやしないか
そう思い、ちらりと近くを飛んでいるレウスに目線を向ける
『…ゴメンね、流石の僕でもここまで大人数だと…』
バチり、と目が合うと僕の考えが伝わったのか申し訳無さそうに謝られてしまった
もう、他に方法なんて僕には思いつかない
冷や汗で背中は湿っており、冷水を浴びたかのように体温が下がっている気さえする
…そっと、レヴィ達を見た
無意識のうちに縋るような目を向けてしまう
周りから向けられる好奇の目も、気持ち悪がられているかもしれないという恐怖も、そろそろ限界だった
前世で初めて、大勢の前で発表をした時のような緊張に、足が震える
「…今日は初日だ、ここまでにしておこう」
段々といつもの落ち着きを取り戻し始めた父が、ふと言葉を吐き出す
さほど大きくはない声なのに、ざわざわと騒ぐ使用人たちがいる中でもよく通る
まだ始めたばかりだと言うのに、僕の事を考えて切り上げてくれるかと思うと、少しばかり胸が暖かくなる
「そう‥ですね…そうしましょうか」
父の声にレヴィも落ち着いてきたようで、周りに見渡しながら小さく同意をする
「う、ん…」
この視線から逃げられる
そう思った瞬間、身体の力がふっと抜けた気がした
思わず水球を保つのも辞めてしまい、下に落ちそうになったがアディ達が留めてくれた
「えっと…それじゃあ、お茶にでもする?」
僕の心情を感じ取ったのか、もとからの性格故なのか、ふわりとした笑顔でレヴィが休憩を提案してくれる
その安心するような笑みに、こちらもつられて微笑みを浮かべた
本当にレヴィは人の心を読み取るのが上手い
でもこれで、やっと落ち着ける…
そう、ほっと息を吐いた時だった
「ちょっと、待ちなさい!!」
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