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誕生日
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入学式の数日前に行われる入寮式の時点で学園に入ることになるため、移動時間を考えると後三週間くらいはここにいることが出来る…
それでも今のノアには「後三週間もここに居られる」と考えられるようなポジティブさはなかった
入寮式に間に合うよう、学園から直々に迎えがくるらしい。
貴族特有の誕生会と今日行われるということもあり、今月は色々とバタバタしそうだと気が滅入る
現に今、父と向き合いながらも頭の中は心配ごとでいっぱいだ
今日の誕生会で言う原稿だとか、3年も魔法を使ってないのに学園でやってけるのかとか、知り合いがいない中でいじめられたりしないか、とか…
どのくらいで此処に戻ってこれるだろうか、とか
学園は完全実力主義らしいから、貴族からのいじめはそうそうないだろうし、権力なんてものは通用しないだろう
その環境が自分にとってどうなるかは分からない、でも、とりあえず無事に過ごせればそれでいい
一応、使用人は連れていけないことになっているらしいけど、僕の場合年が若すぎることや半端強制的に入学させられることから、特別に許可が下りた
他にも何人かはそういった人もいるらしいから、そう悪目立ちすることもないだろう
「_誕生日おめでとう、ノア」
そんな事をぐるぐると考えていた自分に、前から落ち着いた声がかけられる
「…はい、ありがとうございます」
出来る限りの明るい笑みを浮かべながら、感謝を口にした
こうも真正面からおめでとう、と言われたのは今日が初めてじゃないだろうか
いや、今までも祝ってもらってはいたけど何だかんだ言葉で伝えるのはいつも母だった
嬉しいけど、最後の挨拶みたいで複雑でもある
(自分の誕生日に、こんなしんみりしたくないんだけどなぁ)
そう、ぽつりと頭の中で呟けばそれを感じ取ったかのように父が口を開いた
「お前につける予定の使用人とは後で面談の場を設けた。…とりあえず、面倒な誕生会を終わらせよう」
にやりと頬を吊り上げた父に昔の冷たい印象は薄い
「まぁ、なんだ。全体の誕生会の後には、『家族』だけの送迎会も用意している」
もう見慣れてしまった書斎の椅子からすっと立ち上がると、僕の頭を軽く撫でて扉へと向かっていく父
目頭がじんわりと熱くなったのは、きっと父のせい。
思わず、さっきとは違う素直な笑みがこぼれる
「はい」
振り返った時に見えた、父の耳はほんのりと赤く染まっていた
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