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「…今宵は我が息子、ノアの誕生パーティーに参加してくれてありがとう」
ホールより数段高いフロアにある椅子に腰掛けていた父が、執事長から今夜のメンバーが揃ったことを確認すると立ち上がって声をあげた
各々のパートナーとともに会場に入ってきた人々の視線が自然と父へと集まる
「久しい面々も多くとても嬉しく思う。中には遠方から遥々来てくれた者もいるだろう、是非このパーティーを最後まで楽しんでいってほしい_」
そういった父の形式的な挨拶をはじめに、優雅なワルツの演奏とともに僕の生まれて初めての誕生パーティーが始まった。
本来は10歳の誕生日に社交界デビューも兼ねて行うのだが、学園に行ってしまうとそのときに帰ってこられる保証もないため急遽、今年行うことになった。
談笑する人々の煌びやかな衣装に、シャンデリアの光が反射してキラキラと輝いている
必要以上に大きいそのシャンデリアやあまりにも高い天井にはいつまでも慣れる気がしない
今もどこか映画のセットのような空想的なものに感じている
だが、実感がわかないだけで、なんと言っても今日の主役は僕なのだ。
いつまでもボーッとしてはいられない
「ノア様、お誕生日おめでとうございます!」
異なる階級の様々な貴族たちの挨拶を笑顔で受けながらも、その言葉のほとんどは反対の耳から流れていっている
ほとんど同じ挨拶なんて、全て真面目に聞いていたらおかしくなりそうだもん
あの後父や兄は「大人の話」が長引いているようで、しばらくしてもなかなか戻ってこない
「ありがとうございます」
祝いの言葉にお礼を言いながら、視界の端で父達を探すが見当たらない
あれ…さっきはその辺にいたんだけど
そのうち、多いといっても限りのある貴族たちとの挨拶が終わると一気に暇になった
同年代はみんな社交界デビューの前だから、悲しいことに友達はもちろん…話し相手もいない
しかも主役はあまり歩き回ることもできないので、父の椅子の隣に用意された、僕専用の椅子に座ったままで人間観察を始める
この椅子はアンティーク調の赤を基調とした皮でできており、この辺の貴族では珍しく落ち着いたブラウンを纏った樹木のフレームに豪勢な彫刻が施されている
近頃の貴族はやたらキラキラとしたものを身にまといたがるが、父はアンティーク調のものが好きなようだった。そして思い立ったように昨年作られ半端強引に渡されたのがこの椅子である。僕も、どちらかといえばアンティーク系の方が好きだからと安心したのだけど
人間観察を始めたものの代わり映えのしない景色を見るのも続くことなく、なんとなく最近流行りだというドレスの柄を眺めていた
…が、それもすぐに飽きた
笑顔を貼り付けて挨拶、挨拶、挨拶。
みんな、同じようなようすの人ばっかりだからなぁ
ドレスも流行のものばかりなのでそこまで変わらない
兄でも父でもいいから早く戻ってこないかな、とはしたなくない程度に足をブラブラさせて待っていると、離れたところからコツコツという軽やかな靴の音が近づいてきた
コツっと音がして、正面にその足音の主が止まる
「ノア_ 」
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