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第4章 そして、後退
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ここで、また二人の日記に目を移してみようと思う
貴仁のそれは
日々が喜びに満ちていた。その頃彼が日記に度々書いた言葉を使うなら
浮かれていた
そう、龍希君が日々をまた、普通に過ごせる回数が増えて、喜びに浮かれていた。
日記にも、嬉しい事がびっしりと書かれていた
珈琲を淹れてくれた事、
もんたと遊んだ事、
当たり前だった日常を喜ぶ言葉が列を成していた
これは少し余談だが、
我が弟ながら、こいつはどれだけキス魔なのかと思うほどには、キスと言う単語が書かれていて、
龍希君も大変だなと、何だかいたたまれなくなると同時に、兄弟のそんな様子など知りたくも無かったような情報を得て、いささか困惑もする
なんにせよ、
二人して仕事も休みで家に居るのだから、旅行にだって行きたくなる程だ。等と書いてしまうぐらいに
浮かれていたようだ。
嬉しくて、嬉しくてならないのが見てとれた
そんな頃の日記を、
龍希くんのものから紹介したいと思う
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龍希の日記より
4月2日
今日も昼までに自分で起きる事が出来た
それだけで、貴仁さんはとても誉めてくれる
「すごいな、よくやったな」と言ってくれる
これがオレにはすごく嬉しくて、自信になって、気持ちがふっと軽くなる
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4月3日
貴仁さんと過ごせる日々が楽しい
嬉しい。貴仁さんも嬉しそう。沢山沢山沢山
キスをしてくれた
笑っちゃう、好きすぎて、笑っちゃう
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4月6日
やっぱり、オレが元気だと貴仁さんは嬉しそうだ
すごくはしゃいでるみたいな時もある
でも、気が付いた事がある
多分、貴仁さんはめっちゃくちゃ嬉しいのを
少しセーブしてる
多分、オレが気にしすぎないように。
気を使ってはしゃぐのを我慢してる時があるのが解る。
すごく、ごめんなさいって思った。
元気だと元気なりに気を使わせるんだ。
早く、本当に元気にならなきゃ。早く善くなるから、
頑張るから…て誓った。うん、頑張らなくちゃ!
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貴仁の日記より
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4月3日
今日の龍希はとても元気だった。
楽しくて、嬉しくて、気持ちがおさまらなくて
とにかくキスをした。
ずっとキスをしていたくて、抱きしめてキスをして、
いただきますとキスをして
ごちそうさまでもキスをした
もっともっと、キスをしたいよ。大好きだよ
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4月5日
龍希は元気そうだが、今日は少しぼんやりする事が多かった。
少し疲れたのかもしれない。
ゆっくりさせる。
今手掛けてる翻訳で、親子の話が出てきた
ふと、俺も母との事を少し考えた。
母さんは、きっと、今も俺と龍希との事を考えていると思う。
彼女はそう言う人だ。厳しい人だが、愛に溢れている。優しい。
兄と同じで、俺に対しては、甘いだろうと思うぐらいに優しい
ただ、俺も龍希を受け入れようと思えるまでそうだったから解るが、
同性愛と言う関係を近くに考える機会が無さすぎて、息子がそれを選んだ事を、どのように受け止めて良いか、真面目で優しい人だから悩んでいるんだ。
真剣に、考えてくれているのだと思う。
父さんの事はあまり心配していない。
あの人はきっともう俺と龍希の事を認めてくれようとしている気がする。
きっと、母さんの気持ちが自分と同じになるまで待っているのだろう。
知らない事が無くなるぐらいに調べながら。
きっと、実家は今頃、LGBTや同性愛の文献が山積みになってるのだろうと思う。
二人が、受け入れてくた頃には、俺や龍希より、
今の世界での同性愛の在り方について、詳しくなってるに違いない
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4月6日
龍希の元気がない。また少し疲れたかな?
と思い、抱きしめてあげたくなって、抱き寄せたが
それを拒まれた。
そう言えばキスも拒みだしていて、
それは、鬱の症状にもありがちな、性欲の減少だろう
俺は確かに触れたいしキスもしたいが、
考えても見れば、俺達のセックス自体、普通のその行為とは少し違い、
触り合うだけの行為だ
その行為が無くなるのはそこまでダメージではないはずで、
何より、あいつが居てさえくれればそれ以上に、何が必要だって言うんだ。
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4月8日
龍希が起きてこなくなった。部屋に籠っている
声をかけたが、具合が悪い。とだけ言われた
少し、泣いているような時もあった。
ひどく落ち込んで居るように感じた。
薬の量も戻っている。
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