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プロローグ
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あの日は七月の蒸し暑い日だった。
ねっとりとした外気は汗を吹き出させシャツを濡らす。
男――浅海幸一は高校教師である。しかし、彼はある生徒に恋をしていた。男子生徒であった。
教師としてあるまじきことではあるが――そこに魅力を感じるのだろう――漫画やドラマでも、教師と生徒の禁断の恋を題材とするものは多い。
ましてや浅海とて一人の人間である。たとえ生徒であろうと恋愛感情を抱くことはあるだろう。
何より、浅海とその男子生徒は接触することが非常に多かった。男子生徒は浅海に絶大な信頼を置いていたのだ。
放課後、教室に残って二人で雑談をすることが日課だった。楽しそうにしている彼が、浅海は大好きであった。
その愛情は時間が経つにつれ、次第にその愛情を形として残したいという欲が絡んでいった。
彼に触れたい、抱き締めたい、キスをしたい。その首筋に自分の「証」を残したい。
なんでも良い。彼を好きな自分がいる、それは間違いではないと思いたかった。
彼をどれ程思ったことだろうか。性欲に従って、何度「彼で」果てただろうか。妄想で彼を犯し、夢でも彼を犯して夢精する。そんな毎日がとても辛かった。
けれど、彼と過ごす時間は充実そのもので。幸せが胸いっぱいに広がっていくようで。ずっと、これで良いのだと思っていた。
なのに何故だったのだろう、七月の「あの日」が来てしまったのは――
いつも通り教室に向かう。今日はやらなければならなかった仕事が残っていたので、少し遅くなってしまった。
廊下を歩いていると、彼が待っているであろう教室から声が聞こえた。それは彼の声ではなかったので不思議に思っていると、
『うっ……やだぁ……』
彼の声が聞こえた。しかし、その声は上擦っているように聞こえた。
急に嫌な予感がし、浅海は教室の引き戸を開けた。
――見たくはなかった、こんな彼の姿なんて。
いつものように椅子に座って笑顔で手招きをする彼はいなかった。
教壇の上で四つん這いになり、尻の穴には数本の鉛筆がぎちぎちに詰まっている。
身体はふるふると震えており、太腿からは自身のものであろう精液がつぅーっと滴り落ちた。
彼の周りをクラスメイトの男子生徒たちが囲んでいた。とてもいやらしい顔をしていた。性欲を帯びた瞳をしていた。
その顔、その笑い声。すぐにわかった、彼を犯そうとしているのだと。
そうとなれば、すぐに行動するしかなかった。
『お前ら、何をしている!』
大声で怒鳴ると、男子生徒たちは焦ったようで、鞄を掴み教室を飛び出していった。
浅海は哀れな姿で震えていた彼に近寄った。
『大丈夫か……?』
彼の背中に手を置き、顔を覗きこんだ。羞恥と苦痛で歪んだ表情をしている。
「今抜いてやるからな」
浅海は慎重に鉛筆を抜いていく。ゆっくりと動かしていく度に、内肉と擦れて彼の身体がビクンッと震える。
最後の一本を抜き終わると、彼はもう身体を支えきれなくなって床に突っ伏した。
「これはひどいな……」
一、二本ならまだしも、三本以上は激痛が走るだろう。見たところローションは使っていない。無理矢理押し入れたようだ。
無理矢理押し入れてしまえば、尻の穴が切れてしまって腫れてしまう。
保健室に連れていかないと――
鉛筆を強引にポケットに突っ込んで、彼を抱き上げる。自身の上着で彼の下半身を覆った。
教室を出て『保健室に行くぞ』と彼に告げると、彼は弱々しくも笑って頷いた。安心したのだろう。
保健室には担当教員も生徒もいなかった。
教室に入って彼をベッドに下ろす。
浅海は薬を求めて薬品棚を漁った。『薬について詳しい知識はないんだけれどね』と彼に話しかけながら、一つ一つ薬のケースの効能を確認する。
切り傷なので探すことのには苦労しなかったが、薬品があって良かった。切り傷用の塗り薬を手に取る。
『見たときに少し切れていたからな』と言ってケースの蓋を開ける。『じゃあ四つん這いになってくれ』と頼む。
彼は浅海の上着を横に置いて、言われた通り四つん這いになった。
『少ししみるぞ』
浅海は彼の尻の穴の入り口に傷薬を塗る。しみて痛いのだろう、彼は『んっ』と短い喘ぎを漏らした。
それを聞いた瞬間、浅海の背中に電流が走った。思わず唾を飲む。
彼がそんな自分を見て、どうかしたのか、と訊いてくるから、彼に悟られないように『大丈夫』と答えた。
大丈夫だ。そう、自分は大丈夫。冷静だ。理性は保てている。彼のこんな生々しい姿を見ても自分は動じない。
――何度も、この光景を夢に見た。この姿を想像した。それが、今、目の前にある。
……ナカも切れているかもしれない。それなら、塗ったほうがいいよな? ――
気づけば自身の指を彼の尻に挿入していた。
『先生! 待って! やめて……!』
彼の叫びは浅海には届かなかった。浅海の理性はとっくに飛んでいたのだ。
『ナカまで切れていたらどうする。……大丈夫だ、我慢しろ』
浅海の指は尻の内壁に沿って奥へ奥へと侵入していく。
駄目だ、駄目だ、やめろ。こんなことしてはいけないんだ。してはいけないんだよ。わかってる。わかっているのに――
『ひぁっ……!』と彼が喘ぐ。
止められないんだ――
『薬を塗っているだけ』と呟くと、浅海は指をもう一本増やした。
『まっ……! 嫌、嫌、嫌っ!』彼が必死に懇願する。『嫌だっ、先生! せんせぇ!』
彼の悲痛な叫びが無情に響く。
はっとした。慎重に指を抜く。
やってしまった。なんてことをしてしまったんだ、自分は――
『すまない……』
浅海の声は震えていた。
『先生……なんで……』
『違うんだ、これは……。お、オレは……――すまなかった。本当に悪いことをした。お願いだ、許してくれ』
浅海は彼の背中を支えて起こした。彼の肩に優しく手を置いて項垂れる。
もう駄目だ、隠せない――
『――なんだ』微かな声で呟く。『好きなんだ、お前が……』
隠し通してきたこの想いをついに伝えてしまった。
どうなんだろうか。受け入れてくれるのだろうか。いや、受け入れて欲しい。自分の手をとって笑ってほしい。
『え、せん――』
『好きだ』
彼の言葉に被せてもう一度告げる。
浅海は彼の頭を愛しそうに撫でた。彼は安心したように少し口角を上げる。
しかし、顔を上げた彼の瞳はみるみる嫌悪の色を帯はじめた。
次の瞬間、彼は浅海の手を振り払って保健室を飛び出して走り去ってしまった。
彼が笑ったのは、自分の告白を恋愛と捉えていなかったからだった。
彼が好きだったのは、先生である自分だったのだ。
どれ程大切にしていようと、どれ程相手を想っていようと、自分は先生だった。
――『先生』だったんだ。
大切だった恋が、散った。
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