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トイレの洗面所で顔を洗う。気持ち的にすっきりしたかったのだ。
興奮して火照った顔に冷水が心地良い。勃起も治まってきた。
「あぁ……だるい」
そう呟き、洗面台に手をついて項垂れる。
すると、浅海の首筋を"何か"が這った。思わず「ひぃっ!?」とすっとんきょうな声をあげる。
振り返ると、瀬世がにやついた顔でこちらを見ていた。
「ぜ、瀬世、お前……!」
浅海は無意識に身構えた。本能で危険を察知したのかもしれない。
瀬世はゆっくりと浅海に近づき、洗面台に両手をついて浅海を覆った。瀬世は浅海より背が高いのだ。
二人の顔が近い。瀬世の吐息が頬にかかる。
「瀬世、授業中……!」
「……勝手に教室を出ていったのは先生だ。先生の方がいけないよね。それに……今日の自習も勝手だったし」浅海の首筋を撫でる。「……さっき、首筋弄ったのはオレだけど。何が這ったと思う……?」
浅海は戸惑いながらも首を横に振る。
瀬世はニヤリと笑った。
「……オレの舌」と言って舌をチラリと見せる。
背中をぞわぞわと何かが走った。
舐められたのか? ――。首を押さえる。
瀬世は浅海のその手をとると、急に目を細めて真剣な表情になった。
「……今日、変だったけど……何かあったの?」
次の瞬間、浅海の顔がカアッと赤くなり熱を持っていく。
見透かされたのか、コイツに。恥ずかしい。恥ずかしい……! ――
その様子を見て、瀬世の瞳が曇った。
「なんでもないんだ、気にしないでくれ。……それより、早く教室に戻るぞ」
浅海は掴まれた手を払って、先にトイレを出た。
「……なら、いいんだけど」
瀬世はそう言って、浅海の横に並んで歩いた。
教室に戻ると、あと数十分で授業が終わる頃になっていた。
瀬世は自分の席に戻って再び寝るために机に突っ伏した。
浅海は近づいてぐいっと瀬世を起こす。
「……何、やっぱりまたしてほしいの?」
瀬世は頬杖をついて、指をちろっと舐めて見せる。
「んなわけあるかよ」
呆れと怒りで声が震える。
「……わかったよ。ちゃんと自習するよ」
さすがに浅海の機嫌を損ねたことがわかったのか、瀬世は大人しく自習にとりかかった。
浅海は再び生徒たちの様子を見て回る。
その姿を、瀬世はじっと見つめていた。
浅海が時計を確認すると、もう授業終了まで数分になっていた。教壇に乗って生徒たちに告げる。
「今日は私事で皆に迷惑をかけたからな、課題は無しにしよう」
教室がどっとわいた。
無邪気にはしゃぐ生徒に浅海は思わず苦笑いをする。
「でも、予習・復習は忘れるなよ!」と注意をすると、はーい、などという子供みたいな返事を返されるものだから、微笑ましくてついふわりとした笑顔を浮かべる。
チラリと瀬世の様子を伺うと、瀬世はこちらを見て舌舐めずりをしていた。
少しドキリとする。
瀬世は控えめに小さく手を振った。
その口元に浮かべる微笑はとても優しく見えた。
浅海は口元を手で隠し、そっぽを向いた。これ以上彼を見ていては気がどうにかなりそうだった。
そして、授業終了を告げるチャイムが鳴った。
「じゃあ今日はここまで。休憩な」
浅海は教材をまとめると、それを持って教室を後にした。
あぁ、疲れた……――
ため息をつくと、次の授業の教室へと向かう。
――教室を出るときに瀬世がどこか寂しげな表情をしていたのは、見なかったことにした。
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