アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
④
-
翌日の放課後。
浅海は言われた通り――先に出来る仕事を片付けてから――教室に向かった。
あの瀬世が相談。どんな悩みがあるのか聞いてみたい気持ちは正直強い。
それが、もしかしたら彼の日常にきたす転機となるかもしれない。
あのひねくれた性格が治れば儲けものだ。彼にも友達の一人や二人、恋人だって出来るだろう。
そうなったら、少しは可愛がってやれるのだが――
浅海が教室に入ると、中には瀬世しかいなかった。
瀬世はこちらを見据えると、軽く手招きをした。
――こうして生徒と二人で教室にいると、あの頃を思い出す。まだ、平穏だったあの頃を。
「……先生。こっち来て、座って」
瀬世は自分の隣の席を示す。
言われた通りに座ると、瀬世も席についた。お互いに向き合う。
「で、相談ってなんだ? 先生に言ってみろ」
浅海はなるべく優しい声色で言った。
瀬世は浅海をじっと見つめると口を開いた。
「……先生って――男の人を好きになったことって、ある?」
頭に雷が落ちたような――実際はどうか知らないが――衝撃を受けた。
浅海の顔が一瞬で赤くなる。
「……あるんだ」
一瞬、瀬世の瞳が曇ったように見えたのは見間違いだろうか。
「……先生って、奥さんと子供さんいるんでしょ? 大丈夫なの?」
「結婚前の話だ。……それに、オレは恋愛対象として見られてなかったしな」
そう、先生としか――
瀬世は眉をしかめた。
「それで、お前の相談って……?」
浅海はその場の空気を仕切り直すために再び訊いた。
「……オレ、男の人、好きになって……それで」
瀬世は少し憂いを帯びた瞳で浅海を見つめた。
普段見せない瀬世の表情にどきりとしてしまう。
「そうなのか……。まあ、先生にも同じことがあったんだ。大丈夫、気にする必要はないよ」
同性に好意を抱くことを自分自身が異常と思ってしまうことは、それだけで心の重荷になる。
周りから認められないことは百も承知だから、自分で自身を異常だと思ってしまうのだ。
だから、自分が瀬世の理解者になって、真っ直ぐ前を向いてもらうことが一番だと思ったのだが。
「――……何それ。ねぇ、なんなのそれ。オレが傷ついてるとでも思ったの? オレが同性愛者だから、周りに認められないことが重荷だと思った。だから先生は自分が理解者になろうとした、違う?」
瀬世は冷めた瞳で浅海を見た。「……馬鹿なの、先生」
「え……?」
瀬世はくすっと笑うと机に肘をついて頬杖をついた。
「……いい? 先生。よく聞いてよ。オレは正常だし、何も間違ってなんかいない。正しいのはオレだ、オレが全てだ。オレに出来ないことなんてない。なんでも手に入れてきたんだ」
迫力のある言葉に浅海は聞くことしか出来ない。
「……だから、先生。たとえ好きな人に奥さんと子供がいても――」席から立ち上がりゆっくり浅海に近づく。
瀬世は浅海が座っている椅子の背もたれに両手を置いて浅海を覆った。
「オレは絶対に手にいれる。どんなことをしても……ね」
そう言うと瀬世は不敵に笑った。
「瀬世……?」
不安そうな声色で訊き、瀬世を見上げる。
すると、瀬世はくすっと笑って、
「……先生、オレのものになって」
強引にキスをした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 57