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わからない。
あのとき、確かに悪寒を感じた。嫌な予感がした。
瀬世なら絶対に何かしてくる。
浅海にはあの瀬世の顔が拭いきれなかった。
「……もう、なんなんだっ」
浅海は踵を返すと教壇に立つためにその場を去った。
しかし、疑念はそう簡単に拭いきれるわけでもなく、浅海の頭をどんどん侵食していく。
おかしい。
いないはずの瀬世の視線を感じる。刺すような視線。
――怖い。
ただ、それだけがあった。
ただ、それだけが頭を回っていた。
結局、丸一日頭は瀬世の不敵な笑みでいっぱいだった。
瀬世の瞳は内に秘めた野望を映していた。ギラギラと燃え盛る野望を。
浅海には、それが怖くて仕方がなかった。
まるで――人でも殺しかねない目をしていたから。
しかし、それは一瞬で消え去ることになった。
信号待ちをしていた浅海の視界には、反対側の歩道を歩く見覚えのある人物がいた。
その人物は、若い男性と親しそうに歩いていった。男性の腕にしがみつき、身体を寄せている。
「あれは……!」
見間違いか……? いや、でもあれは――
車のライトが一瞬、彼らの姿を照らす。
その瞬間、浅海は絶望した。どうしようもなく、ただ、唖然とその光景を見ていた。
間違いではなかった。やはりあれは――
――紛れもない、浅海の妻だった。
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