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⑦
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目を覚ますと隣には瀬世が座っていた。静かにぼーっとどこかを見つめ、ただそこに座っていた。
「ぜ……瀬世」
掠れた声でそっとその背中に声をかけると、瀬世ははっとして振り返ってこちらを見た。
「……起きたの、先生」
「あぁ……」
すると、瀬世は浅海の喉に手を這わせた。優しく撫でるように、また時々力強く絞めるように。
「な、なんだ……よ。痛いって……ばぁ」
「――……オレの」
「え、何――」
「……何も。何もないよ」
そう言って髪を優しくすくのだった。
そういえば事後に長話をするのは珍しかった。いつもは学校であったから焦って話をする余裕なんてなかったのだ。
「なぁ、そういえばお前、バイトどうした」
浅海から話を切り出したので、瀬世はにこりと笑って浅海の頭を撫でた。
「……ちゃんとやってるよ。まぁ、シフトは変えてもらったけど」
「最近ずっと家に来るから辞めたのかと」
「……だって、先生と一緒にいる時間増やしたくて」
え……――
――浅海は少女漫画みたいなキラキラした恋愛は嫌いだった。そんなことあるわけない。こんなキザ野郎一体どこにいるんだ、って。
結末はいつでもハッピーエンド。そんな綺麗事の妄想なんてどうでも良かった。いつでも悲しいバッドエンドしか自分は知ってこなかったから。
大嫌いだった、皆が望む恋愛は。縛られた恋愛は。世間体だけを気にした恋愛は。
自分は好きになった人と一生を添い遂げるんだ――
それが、自分が出した答えであった。
「なぁ瀬世……もしさ――オレが一生一緒にいたいって言ったらどうする」
その時の瀬世の顔は、自分が今まで見た中で一番魅力的であった。
――綺麗だ。綺麗な微笑みであった。
「……嫌」
「は……?」
思わず素で聞き返すと、瀬世はにやりと笑って浅海を自身の腕にすっぽりと収めた。
「……嘘。――喜んで」
ぎゅっと力強く抱き締められる。絶対に放してなるものかと訴えているようだ。
「……あなたが死ぬまで、オレはずっと添い続けます。あなたが死んでも、オレは誰とも結婚しないし誰も好きにならない。一生あなただけを想って生きていきます」
気づけば、浅海は濡れていた。それは自分の涙だけではなかった。
「――……あなたと相生します」
その言葉だけで十分だった。それだけで自分は死ぬまで生きられる。
でも、瀬世がいないとやっぱり嫌だ――
「瀬世、大嫌いだよ」
「……先生は嘘が苦手なんだね」
「ははっ、バレたか」
大好きだ。これからもずっと。
大好きだ――
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