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⑤
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その日の放課後、いつも通りまた朝のように瀬世が手伝いをしに顔を見せる――はずだったのだが。
瀬世よりも早く現れたのは佐和田であった。
「浅海せんせっ」
首を傾げてにこりと笑う。
この笑みに一体何人の女性が堕ちたのだろう。何人の女性が騙されたのだろう。何人の女性が泣いたのだろう。
だが浅海は騙されまいと強く決心した。絶対何か企んでいるのだ。その綺麗な顔の仮面を剥がすと卑しく笑う悪魔がそこに在るに違いない。
怖い。この男が怖い。
コイツはオレをどうしたいんだ――
「な、なんだ……?」
「んー、特に理由はないんだけれど……」
佐和田は浅海の顔をまじまじと見つめる。そして、ぽつりと呟いた。
「先生って……案外年とってる?」
案外ってなんだ! 案外って! ――
「一応……四十三だが」
「へぇ……いいね」
そう言って佐和田はにこりと笑うのだった。しかし、その一瞬前、確かに舌なめずりをするのを浅海は見た。
「いいねって……何が?」
浅海は探るように訊いた。
「何がって……」
ぎらりと佐和田の瞳が光る。異様な威圧感だ。
浅海はごくんと唾を飲む。
「……先生」
美しい声がして振り返ると、瀬世がとんでもなく恐ろしい顔をして立っていた。その目は佐和田をしっかりと捕らえていた。
その視線に佐和田も負けじと睨み返す。
間に立つ浅海は今にも勃発しそうな戦争にただただ怯えていた。
「……誰、これ」
瀬世は佐和田を指差した。
「浅海先生、誰、これ」
『これ』呼ばわりされた佐和田もにこりと貼り付けた笑みで瀬世を指差す。
なんか、怖いんだけど。飛び火が来ませんように――
「あー……えっと、瀬世、彼は佐和田。佐和田、彼は瀬世だよ」
「……へぇー」
と声を合わせて二人はまたお互いを睨みつける。
頼むから他所でやってくれ――
周りの教職員から好奇の目で見られる。この状況は確かに異質そのものだった。
「……先生、手伝うよ。どこ?」
浅海は早くこの場を終わらせようと口を開いた。
「あ、そうだな。じゃ、じゃあ、佐和田、とりあえず今日は帰って――」
「お手伝いですか? 全然やりますよ」
佐和田は首を傾げてにこりと笑った。してやったという笑みで。
ちらりと浅海を見ると、もはや殺意しか写していない瞳をぎらぎらと輝かせていた。
「じゃ、じゃあ……ついてきてくれ」
最悪だ……――
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