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⑥
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放課後になると浅海は佐和田が待っている教室へ向かった。正直、二人になることはあまりいいことのようには思えなかったが、話したいこともあったし、どこか大丈夫だと思っている自分がいた。
佐和田の待つ教室の扉を開けると、自分の席に座って黙々と勉強に勤しんでいる佐和田がいた。
浅海はその姿に少しドキリとした。失礼なことだが、軽そうな印象の佐和田が勉強していることに若干のギャップを感じたのだ。
扉の音に気づいて顔を上げた佐和田は浅海を認めるとにんまりと笑って手招きをした。正直、その笑顔が浅海は苦手だ。自分の痛いところを全てひた隠しにする、ただ自分を守るがための笑顔。浅海にはどうしても、その笑顔が傷ついているようにしか見えなかった。
「――やめろよ、作り笑い」
つい口から零れ出た言葉に自分でも驚く。しかし、一番驚いているのは目の前にいる佐和田だった。大きく目を見開いて浅海を凝視する。
「作り笑いって……何ですか。オレの笑顔、そんなに嘘臭いですか?」
佐和田はまたにんまりと笑ったが、口角が微妙にひきつっているように見える。動揺しているのか。
佐和田の近くの席に腰を下ろすと浅海はじっと佐和田を見つめた。そして恐怖した。佐和田の瞳――綺麗な長い睫毛を持ったにんまりと細めた目の奥は泥水だった。泥水みたいに濁っていた。
そして感じたのだ。泥水の中になぜか消えない炎がちらちらと揺らめいているのだ。その炎は泥水の中でぼんやりと、しかし確かにそこにあった。これは欲望だ。性欲だ。情愛だ。何も変わっちゃいなかった。彼は間違いなく、秘めた情欲を持ち合わせている。
――しかし、佐和田はそれを抑えておけるほどの理性を持っているようだった。あの日のような動物性は感じられない。
「先生……オレね、先生のこと好きです。大好き。だからわかって欲しかった。オレがどれだけ先生のこと好きか」
佐和田は浅海の手を取ってきゅっと握った。
「先生だけなんです、こんなに執着するの。先生だけなんですよ、こんなに――家族になりたいのは」
佐和田の瞳はいつの間にかすっかり澄んでいた。余裕ぶった笑顔はどこにもなく、ただただ必死で哀しそうな泣きそうな表情だった。
しかし、それは理性の枷を外したようだ。佐和田はそっと囁いた。
「先生……――もう一回、セックスしてくれませんか」
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