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⑦
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浅海は固唾を飲んで佐和田を見つめた。彼には確かにまだ欲望があった。それが理性を破って出てきてしまったが、浅海に無理矢理ぶつけるのではなくて何故か合意を求めている。
「この前はすみませんでした」
佐和田は浅海のマスクを外して机の上に置いてから、浅海の頬を撫で回した。甘い、甘い手つきだ。これは、『恋人』にする愛撫だ。
「先生の綺麗な顔……たくさん殴って、傷物にしてしまいました。傷つけてごめんなさい、痛かったでしょ。もうしないから、もうしないから許して、ね? もう一回、オレにチャンスを頂戴?」
佐和田は浅海の唇を親指で何度も撫でた。そのまま顔を近づける。浅海はひゅっと喉を鳴らして間一髪、自分のと佐和田の顔の間に手を滑り込ませることが出来た。
「やめろ……。チャンスとか、そんなのはない。初めからないんだよ。ごめん、慕ってくれたのは嬉しいけど、お前をそういう目で見るのは無理だ」
浅海は目で必死に自分の気持ちを訴えた。無理なんだって、決して入り込む隙を与えないように教師としての厳格な態度で。
佐和田は瞬間哀しそうな顔をして、すぐににんまりと笑顔を繕って見せた。
「そうですか。……残念だなあ、フラれちゃった」
「おい、またそんな顔して……」
「作り笑い、ですか……。先生、ちょっとは考えてよ。これでも傷ついてるんだから」
佐和田は苦笑いをして浅海から離れた。あの日の理性を手離した狂気に満ちた彼とは違う。余りにもあっさりと、佐和田は浅海を諦めたのか。
浅海がぽかんとしていると、
「――で、先生の話ってなんだったの」
と、佐和田が机に頬杖をついて訊いてきた。
「あ、あぁ……」
浅海ははっとして、教師らしい真面目な顔をした。それを見て佐和田がくすりと笑ったのを、浅海は見逃さなかった。少しムッとする。
「お前、俳優とか声優に興味ないか?」
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