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新学期(6)
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扉を開いたのは、長田 香だった。
茶色の縦巻きロールを揺らし、静かにサロンへ入る。
「おはよう。怜以外は全員揃っているか。」
2冊のファイルを抱えた香がそう言うと聖夜は、それ今じゃなきゃだめなの?と言う。
少し、理人の呼吸が乱れた気がして、安心させるように肩の当たりに置いたままだった手をトン、トン、トンと優しく動かす。
「すまんな。……理人は寝てるのか。」
「そうだよ。今寝たばっかり。」
聖夜が威嚇する様に香に言うと、香は苦笑いして言った。
「ならば、そのまま寝かせておけ。直ぐに終わる。」
香は潤に2冊のファイルを渡し、鉄平の隣に座った。
「今日ウチ(Sクラス)に編入生が来る。俺たち、2年と同い年の奴だ。」
「聞いてないんだけど、そんな話し!」
「そうですよ!なんで今日の今日なんですか!?」
「鉄平、流生、落ち着け。理人が起きちまうだろ。」
「あ、ごめん。」
「すみません。」
二人同時に小さく小声で謝ると、鉄平と流生は理人を確認する。
「んー……。」
理人は小さく身じろぎをして、また聖夜の腹にぐりぐり額を押し付け、止まった。
その間ずっと聖夜は、一定のリズムでトントンと肩をたたいていた。
「せーふ?」
鉄平が恐る恐る、聖夜と目を合わせると聖夜はニッコリ笑って言った。
「アウトだよ。」
「え。」
「ゲホゲホッ……ゲホッ……ゲホゲホゲホ……。」
「理人、身体起こして、ほら。」
聖夜が支えながらゆっくり理人の身体を起こすと、理人は凄く苦しそうな顔で、胸の辺りを押さえていた。
「おいで。」
聖夜は170も身長のある理人をひょいと持ち上げると、自身の膝の上に向かい合わせになるよう理人をのせた。
背中をほんの少し強めに叩き、肩にのる理人の頭を撫でると徐々に咳が落ち着いてきた。
「理人、大丈夫、誰も怒ってないよ。理人はいい子だ。大丈夫。……鍛錬大変だったね。衣装はバックの中?」
「ケホッ……ん。」
「そっかそっか。あとで、アリスに直してもらおうね。」
「ん。……ケホケホ、ケホケホ……。」
咳き込むため、力んでいた理人の身体から徐々に力が抜けて、くたりと完全に聖夜に身体を預けた。
聖夜はやっぱり、優しくトントンと背中を叩き、大丈夫、大丈夫と繰り返し理人の耳元で囁く。
「寝た。ごめん吹雪、手伝って。」
「わがった。(わかった。)」
吹雪が理人を抱き上げると、すかさず鉄平が布団を拾い、聖夜の膝枕で理人をソファに寝かせると布団をかけてやった。
「ありがとう。さぁ、続きをどうぞ。」
聖夜がニッコリ笑うと、潤は苦笑いして話を再開した。
「えーと……編入生の名前は、桜庭涼介。男だ。今怜が迎えに行ってる。昨日決まったばかりで、クラス長の俺と、副長の香、寮の同室になる怜だけが聞かされていたんだ。」
「てことは……家もちじゃないんだね。」
「聖夜の言う通り、編入生は一般家庭で育った人間だ。すなわち、禊法のセの字も知らないド素人。しかし、強力な陣を1人でいくつも張れる。」
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