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新学期(10)
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「はい。」
そう返事をした桜庭は、立ち上がり理人の手を取った。
手の甲に、軽く口付けながらポロポロと涙を流す。
「よし。お前の持てる力、俺に見せてみろ。」
桜庭は涙を袖でゴシゴシと拭き、心臓の辺りに手を添えて頭を下げる。
「御意。」
返事をした桜庭は、守護陣から抜け出すと地面に片手を着くと呟いた。
「守れ!我が主のために……滝流!」
小声に力を込め放った言葉により、どこからともなく風が吹き、鬼に纏わり付く。
サラサラと優しい曲が流れ出した。
聖夜が鬼を縛っている術に干渉しないようにしつつ、的確に鬼の急所を鋭い風で切りつける。
「ヤタ様、こちらへ。」
アリスが理人を呼ぶ。
そこは聖夜が書いた守札で作られた直径3m程の守護陣だった。
守護陣の中心に立った理人は、シャンと一つ神楽鈴を鳴らし、ふわりふわりと舞い始めた。
藍色だった千早はみるみるうちに浅葱色に変化し、桜の模様が浮かび上がった。
鉄平は聞いたこともない曲に合わせ、知らないはずの四節を歌う。
吹雪も身体が勝手に動くまま、神器を奏で鉄平と同じ四節を歌う。
不思議な感覚だった。
知っているようで、知らない。
懐かしいようで、新しい。
理人を見ると、やはり平然と蘭舞を舞い続ける姿があるだけだった。
「ぐがぁぁぁぁぁ!」
鬼が一際大きな呻き声を上げると、パァンと黒い霧になって消えた。
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