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脊髄反射は微炭酸
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病院に着いてすぐ、受付で朝日奈の名前を出せば、あっさりと牧野の病室前に案内された。事前に見舞いに行くことを連絡していたからだろう。流生は扉の前でぎゅっと拳に力を込めて、気合いを入れる。普段人と話す時、緊張などしたことがないのにバクバクと早く動く心臓に動揺が隠せない。落ち着け落ち着けと心の中で暗示をかけても効果はなかった。
「なんだ、緊張しているのか、流生。お前にしては珍しいな。」
扉を3回この拳て軽く叩くだけ。それなのに何故か身体が動かない。なかなか扉を開けないでいると、理人に後ろから腕を引かれた。声も出せず、あたふたしながらそのまま理人について行くしかできない。そのまま病室から離れ、一番近い自動販売機の前まで来ると理人はやっと手を離した。
「どうした。」
「・・・。」
「息の仕方を思い出せないのか。」
言葉に詰まると、ピタリと当てて来た。やはりこの人は侮れない。
「なんで、分かるんですか。」
「俺はお前の脊髄反射トークが好きだからな。」
予想を遥かに上回る回答が返ってきて、流生はキョトンとしてしまう。
「え!?なんですかそれ。おれをバカにしてますか?」
「・・・3時のおやつは?」
「・・・・・・文明堂。」
「あたり前田の?」
「・・・クラッカー」
「ほしーのほしーの」
「星のカービィ」
「ごめん、2人ともなんの会話をしてるの?」
「懐かしいっすねー。俺グツグツ煮込みハンバーグのCM好きでした。」
「ああ、あれ耳に残るよな。」
「CMの話なのね。」
「懐かしいだろ?」
「うん。何年生きてるの君たちは。」
「17だ。」
「そうだよね。その計算だと明らかにおかしいやつ混ざってるけど。」
「あれ?聖夜さん意外とそういうの知ってるんですね。」
「まあ、一通り世間のことは頭に叩き込まれたからね。」
「え?ふふふっ。あんまり重要じゃないことも教えられたんですね。」
「聖の師は面白い人だよな。」
「いいなー。俺もユーモアのある師匠がよかった。」
「俺もだ。」
「あー。理人、怜、流生、の順で鬼師匠だもんね。」
「鉄平さんの師匠が一番羨ましいなー俺は。」
他愛ない話をしながら、聖夜は自販機に小銭を入れボタンを押した。
「流生、炭酸ジュースでいい?」
言いながらガコンと落ちてきたのはミルクティーで、それをすっと理人に渡すと流れるようにブラックコーヒーのボタンを押す。
「はい。いいんですか?」
「いいよ。皆には内緒ね。」
「ありがとうございます!ご馳走様でーす。」
渡された炭酸ジュースは見たことがない毒々しい色のパッケージで微炭酸と書かれていた。聖夜の顔を見るととてもいい笑顔をしている。
「え、なんかこれやばくないっすか?」
「炭酸ジュースでいいって言ったじゃん。」
「うわ!言いましたけど!」
「病院で大声出すな。」
「う、すんません。」
「牧野ってなんか飲んでいいのかな?」
「怪我だけなんだから、大丈夫だろ。流生と同じやつ。行くぞ。」
いつの間にか流生は、自然といつものように会話が出来て、楽になっていた。この2人の優しさにどれだけ救われたのか分からない。どんな感謝の言葉も足りないくらいに、恩を感じている。
「あーもー!」
「だから、うるせぇ。」
「理人さーん。大好き!」
「うわ。」
先を歩いていた理人に後ろから抱きつくと、嫌そうな声を出しながらも振り払われたりしない。
「ほら、あんまり理人に寄りかかんないで。」
「えへへ。すんません。聖夜さんのことも好きっすよ!」
次は躊躇わず、コンコンコンと扉をノック出来た。
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